短編

□子供と私と2
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今日も元気に鍵渡せと来た官兵衛であったが、目の前にいるのは久しぶりに嬉しそうな三成と、その三成に抱えられている、どこか吉継に似ている何やら目の死んだ子供のみだ。
どこの子供だと思いつつ、刑部はどこだと官兵衛が怖々三成に尋ねるとどうやらこの子供が吉継らしく、こんな可愛らしい人間が刑部以外にいるものか、と怒鳴られた。
官兵衛は頭が真っ白になった。
「…………ぶっ、ハハハハハハ! なんだ刑部、そのちんちくりんな姿は!」
のは一瞬で、すぐさま調子にのってぽふぽふと吉継の頭巾を軽く叩く。当事者である吉継だけでなく、三成も睨んでいるが官兵衛が気にしている様子は窺えない。
「しっかしお前さんも子供のころは可愛かったんだ―――ぬわぁあ!?」
ぐーりぐーりと吉継の頭を掻き混ぜる官兵衛は、ついに堪忍袋の緒が切れたらしい二人の無言の攻撃を喰らい障子を突き破り隣の間へ強制的に移動させられた。
吹っ飛んでいる瞬間、人間のような何かを巻き込んだような感触があったが、官兵衛は気にしないことにする。どうにも嫌な予感が拭えない。
「黒田……貴様、どうやら死にたいらしいな」
「やっぱりね! こうなると思ってたさ!」
だが巻き込まれた人間は黙っていない。黒田の首に刃物を突き立てボソリとつぶやく。
さすがは不運マン、巻き込んだ人間はドSな冷血漢として名を馳せている元就だったらしい。とんでもない殺気が官兵衛の全身を刺す。
「くらァー、だいじないかァー……っと、どうほう。きていやったのか」
「………………………………大谷か」
そんな中、ものすごく楽しそうに、ものすごく明るい声で吉継と吉継を抱き抱えている三成が官兵衛の元へ来る。そして今の官兵衛の状態に更に機嫌がよくなったらしく、「ふこうよフコウ、ふこうがきやったわ」と秀吉を前にした三成のごとく瞳を輝かせはしゃいでいる。三成はキャッキャッとはしゃぐ吉継を見て幸せそうだ。
元就は誰だ貴様はと言いかけたが、自分を「どうほう」などと吐かす人間は一人しかいないと思い、その名を口にする。ようわかったな、と吉継はニマァと笑った。
「何しに来たサンデー毛利。私は貴様の赤ルートや青ルートで刑部にした仕打ちを忘れんぞ」
「我の忘れたい傷を抉るな弱輩。我の思惑に気付かぬ貴様らが愚かなのだ」
「サンデー毛利貴様ッ……官兵衛ッ! 刑部を守っておけ! 私はサンデー毛利を斬滅する!」
「サンデー毛利言うな弱輩が! 日輪の力に平伏すが良いわ!」
話はグダグダなまま展開は西軍ナリナリコンビの喧嘩に打って変わる。
残されたいじめっこといじめられっこの二人は赤ルートやら青ルートやらサンデー毛利やらの単語に首を傾げつつ、官兵衛は吉継を抱えて巻き込まれないよう遠く離れた。吉継がよくわからないが喧嘩―――つまりは不幸らしいと気づくと、更にはしゃいでいる。


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