短編

□親の欲目というかなんというか
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真田を小さくしてみた。
どんな猿飛でも許せる方だけお読みください。




俺様こと猿飛佐助はたいっっっへん困っていた。お館様が倒れたときよりも、真田の大将が一点突破と絶叫しながら雑賀に突っ込んでったときよりも困っていた。
「しゃしゅけがおおきくみえる……」
悔しそうに俺様によじ登る、舌足らずな口調やくりくりした目、つーかもう全部がたいへん可愛らしい子供。この子供こそが俺様の困惑の原因である。
この子供はなんと真田の大将その人。不幸をさんざめく振り撒くどっかの誰かさんからもらった甘味を食べたらこうなったらしい。何者だあの人。うちの子……いや、うちの大将に、仲間の軍の大将に、そして自分の娘の夫に何しやがる。だが―――
「しゃしゅけぇ!」
「はいよー。どうしたの?」
「おれははらがへったぞ!」
「今用意してるみたいだからちょっと待ってねー」
だが、大将が可愛いから許す。あの人たまには良いことするじゃない。
うっかり緩まる頬に力をこめ、できるだけデレデレしないように表情筋の操作に勤しむ。ああもううちの大将可愛い。今が乱世じゃなきゃ、東西南北俺様直々に自慢して回りたいくらい可愛い。いっそのこと大将と二人、修業と称して行っちまうか。
「……け?」
いや、上田ががら空きになるのは避けたいし………上杉さんとこに留守でも頼むか。かすがとかが怒りそうだけど、あの人ならなんだかんだで承諾しそうな気がする。でも仮にも敵だしなあ……借りは作りたくない。
「……しゅけ?」
それか石田軍に………いやだめだ。石田の旦那はたぶん「そんなくだらないことで私たちの手を煩わさせるな!」って感じで切れる。大谷の旦那はたぶん承諾はするだろうけどめちゃくちゃに改悪されそう。あの人なら絶対そうする。
はぁ、誰に頼んだらいいんだろ。独眼竜とか? いやアイツに頭下げたくなんか―――
「しゃしゅけ!」
「うわっ、大将どったの!?」
「しょくじのじゅんびがととのったといっていただろう!」
ぷりぷり怒ってる大将は、けっこう前から俺様を呼んでいたらしい。全然気付かなかった。不覚。
行くぞ、と声を張り上げ俺様の服をひっぱっていく大将にやはり頬が緩む。俺様のこと待っててくれたり、この服をひっぱったりと、どうにも可愛すぎる。いつもの大将も大将で思春期迎えた子供のようなこっぱずかしいほほえましさがあって可愛いけど、この大将は一番手がかかる時期のほほえましさがある。つまりどんな大将も可愛い。大将マジキュート。俺大将になら何されてもいいし何してもいいくらいキュート。もうホントに自慢して回りに行くか。


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