雑記
□蜉蝣(完)
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「おはよう、綱吉」
「雲雀さん!おはようございます!!」
こぼれそうなくらい大きな瞳。金色に輝く綿毛のような髪の毛。
僕の、最初で最後の恋だった。
蜉蝣=かげろう=
『心臓・・・?』
『そう・・・。つーくんはね、生まれたときから心臓が成長してないの。小さいまま・・・。だから、少しでも身体を動かすとすぐに発作がおきて・・・』
僕が綱吉と出会ったのは、今から3ヶ月前の事だった。
風邪をこじらせて肺炎間近で入院した、並盛総合病院の同じ病室。本来なら僕は一人部屋のはずだったけれど、院長の不手際で1日だけ相部屋にと土下座をされた。別に五月蝿いやつならかみ殺せば良いと、部屋の扉を開けた。
『ぁ・・・』
『・・・っ!』
そんな僕の目に写ったのは、白い肌、日本人離れしている髪、零れんばかりの大きな眼を持った”沢田綱吉”だった。窓からの風にふわふわと揺れる髪の毛。僕はきっと、一目惚れだったのだと思う。
「・・・・・・雲雀さん?」
「ん、どうしたの?」
「いえ、雲雀さんぼーっとしてるから。何か考え事ですか?」
「あぁ。・・・君と出会ってもう1ヶ月も経つのかと思ってね」
右手で金色の髪に触れる。さらりと手触りの良い髪が揺れた。綱吉は顔を赤く染めて、照れたように笑う。
「そうですね。雲雀さん、母さんのこと俺の妹かと思ったって。ふふ、母さん未だに自慢してますよ」
「・・・・・・お世辞でもなんでもないよ。君の母親は不老の力でもあるのかい?」
初めて綱吉の母親に会ったとき綱吉の病気の事を聞いた。もう綱吉に出会った時点で、他の部屋に移りたいなんて微塵も思っていなかった。逆に、綱吉の事をたくさん知りたくなった。
なのに、母親の口からは<治らない病気>だという残酷な言葉が出て来て、僕は出会って1日だと言うのに、綱吉に出来ることはなんでもしてあげたいと思ったのだった。
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