雑記
□蜉蝣(完)
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「奈々」
「雲雀君・・・・・・」
真っ赤に腫れた目。横に座っている家光の目も、腫れていた。式の間ずっと泣いていたからだろう、疲れきった感じが二人の顔から感じ取れた。
「これ、貴女が持っていたほうが綱吉も喜ぶ」
「・・・琥珀、ね」
あの箱は、一緒に燃やしてしまったから、それは剥き出しのままだけれど。雲雀はきらきら輝く琥珀を奈々の手に握らせた。
「・・・ツナが話してくれた。雲雀君、ありがとうな」
「お礼を言われるような事はしてないよ。・・・・・・結局、何もできなかった」
一週間前のあの日。
綱吉は逝った。
不定期に来ていた発作に、弱りきっていた綱吉の身体は耐えれ無かったのだ。
『ツナ!!つーくん!!!』
『は・・・っ、はっ・・・!!!!』
苦しそうに喘ぐ綱吉に、医者達も手を尽くした。だが、
『綱吉!!』
『つーくん!!お願い!!!母さん達を置いていかないで!!!』
『かぁ・・・さ・・・っ』
雲雀は、泣きじゃくる奈々の肩を抱き、もう片方の手で綱吉の手を握る。
『君が行きたいと言っていた外国に皆で行くんだろう!?こんなとこで死ぬなんて許さないよ!!綱吉!!!』
『ひ・・・さ、ん』
『治療室に移動します!!!お母さん方は待機を!!!』
切迫した空気の中、綱吉は担架に移され部屋を出る。雲雀も奈々もその後を追いながら、綱吉に声をかけつづけた。
『もうすぐお父さんも着くわ!ね、つーくん・・・っ死なないで・・・っっ!!!』
雲雀は悔しかった。こんなにも苦しんでいる綱吉を、自分は助ける事が出来ない。
『・・・か、・・・さん』
『何!?つーくんっ!!』
『て・・・み、机・・・』
『綱吉!!』
『つーくんっ・・・』
『雲雀さ、』
『綱吉!駄目だ!!諦めるな!』
『・・・・・・、』
治療室に入っていく綱吉。奈々も、僕もしっかりと聞いた。
『ありがとう』
苦しいだろうに、笑っていた。
そのあとすぐ、家光も来た。だが、家光は綱吉の顔を見る事は無かった。綱吉は治療室に入って間もなく、逝ってしまったから。
家光は死に目に会えなかった事より、助けてあげられなかった事を悔いていた。奈々を抱きしめながら泣いていた。その時も、今も。
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