雑記
□蜉蝣(完)
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「・・・僕はもうここにいる理由も無い。あの子がいたから、いただけだから」
もう火葬された綱吉の身体は灰と骨だけになった。本当は琥珀を一緒に燃やしてあげようと思ったのだが、何故か雲雀は出来なかった。
「雲雀君。・・・・・・これは貴方が持っていて」
「・・・なぜ」
「あぁ、その方が良い。君からもらったやつだろうが、それは雲雀君が持っていなさい」
そう言って、今度は奈々が雲雀の手に琥珀を握らせた。
「本当に雲雀君には感謝してるのよ。今度はうちに遊びに来てちょうだい」
「そうだ。今までは綱吉に会いに病室に来てくれていたのなら、今度は俺達に会いに来てくれないか?」
「・・・・・・気が、向いたらね」
あの日、綱吉が死に際に言った、<手紙・机>という言葉。病室の小さな机の中に、両親と雲雀に宛てた手紙が入っていた。
それを雲雀はポケットから取り出し、かさりと開く。もう何度も読んだのだが、それでも、何度も読み返すのだろう。
「・・・・・・僕も・・・そうだった・・・」
ぽつりとこぼした言葉。
ぽつりと零れた・・・。
『雲雀さんへ』
『こんな風に手紙を書くのは少し照れますね。でも、多分自分の口では言えないから、手紙に遺します。』
『実は・・・貴方がずっと、好きでした』
『たった数ヶ月の事でしたけど、雲雀さんといると、すっごく楽しくて』
『だから・・・本当は、死にたくないです。』
『母さんや父さん、雲雀さんと、ずっと一緒にいたい』
『でも、もう・・・俺は死んじゃう、と思います』
『けど、母さん父さんも、雲雀さんもいてくれたから、短いけれど俺は生きてて、良かった!って思います!!』
『だから・・・雲雀さん、どうか・・・俺を、わすれないで』
『貴方がずっと、好きだったから』
『貴方に忘れられる事の方が、俺は嫌だから』
『最期のわがまま、聞いてくれると嬉しいです・・・』
『さようなら、雲雀さん』
『綱吉より』
「僕も、ずっと好きだったよ」
出会ってから3ヶ月。
君は僕の前から消えてしまった。
忘れる訳無い。
君は僕の、最初で最後の恋だったのだから。
「・・・またね、綱吉」
END