雑記
□必然・弐(完)
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たしかに、この店に来るまではそれだけが願いだった。
食事を作らされるのも、洗濯や掃除をさせられるのも嫌で嫌で仕方がなかった。
けど、雲雀の中にはそれだけでは無かった。自由気ままな猫のように、しかし凜とした雰囲気をもつ沢田にいつしか惹かれていた。ずっとこのままだったらとさえ思うようになってきていたのだ。
その気持ちを自覚したばかりなのに、なぜ!!
雲雀は沢田に向かって手を伸ばした。宙に浮いているからか、身体がうまく動かないが、必死で手を向ける。
「もしこの気持ちが、その縁とやらのせいでも、僕は君を忘れるなんて・・・君と離れるなんて嫌だ」
「恭弥君・・・」
「僕は確かに君に対価を払った。でも、願いを変える」
「・・・・・・それは出来ない」
ふるふると頭を振って、もう一度沢田は雲雀を見つめる。今までの強気で、無邪気だった沢田とは思えないほどの悲痛な表情に、雲雀は眉を潜めた。
「お願いだから、俺を忘れて・・・。恭弥君には幸せになって欲しいんだ」
「・・・僕の幸せがなんだか知ってるのかい」
雲雀は今までより、沢田に向けての言葉を強くした。
もう、雲雀の気持ちは変わらない。
「前世がなんだとか、そんなの知らない。僕は僕だ」
「・・・・・・」
「今の僕が今の君を好きになった。今の僕が、君と一緒に生きたいと思ってる。それだけの話だ」
「・・・・・・違う」
「何も違わないさ。もし仮にこの気持ちが、君の言う呪いとやらでも、僕が受け入れた時点で呪いでは無くなってるんだ」
ほろほろと流れる沢田の涙を拭うように、雲雀の手がまた伸びる。まるでそれを受け入れるかのように、沢田は手を下げた。雲雀の身体が静かに降りてきて、雲雀はふーっと息を吐いた。
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