ONE PIECE/左

□The petit shock! [case1 : Yosaku&Jonny ―兄貴の心―
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ひょんな事から出くわした、ゾロのかつての相棒ヨサク&ジョニー。
共に斬った海賊は数知れず。名うての『海賊狩り』だったロロノア・ゾロが、よもや『海賊』になっていようとは───。

人生、何が起こるかわからない。
そしてこの日、二人はその『教訓』をさらに痛感するのであった。

時は真昼間。
所は一流コックを求めて海上をひた走る羊号の甲板にて。
安穏と眠るゾロを見やりながら、二人はコソコソ囁き合った。
 
「しっかし、兄貴が海賊になってたとは愕きじゃねぇか、ヨサク」

「まったくだな、ジョニー」

「なんで海賊なんだ?」

「そうだな。兄貴だったら、海軍にでもなれるぜ。それに、悪党に成り下がるのを一番嫌ってた」

「けど、ルフィの兄貴もナミの兄貴もウソップの兄貴も、イイ奴等だぜ?」

「まあな。だから海賊になったのかもな」

しばし沈黙の、ヨサク&ジョニー。
噂の的の張本人は、至極良い夢でも見ているのか、眠った顔が時折緩む。

「相変わらずの眠りっぷりだと思わねェか?ジョニー」

「まったくだな、ヨサク」

「なんか、イイ夢見てるみてぇだな」

「なぁ……案外好きな奴の夢だったりしてな!」

「兄貴にか!?」

「……この船ン中で言うと、ナミの兄貴だな」

「だろうな、ヨサク………つぅか他にいねぇだろ?」

「わっはっは!違いねぇ!」 
 
一体どんな夢を見ているのか?

好きな奴と推測したヨサクの言葉は的を得ていたらしく、未だ緩んだ表情のまま、ゾロは二人には見えない相手をかき抱く。

「おい!今の見たか?ヨサク」

「完全に見た。えらく色っぽい夢見てるみてぇだな、兄貴」

「お!見たかヨサク!くくっ…兄貴、腰動いてるぜ」

「へへっ…珍しいもん見ちまったな」
 
忍び笑いを漏らしつつ、尚も観察を続けるヨサク&ジョニー。
だが、ふいに聞えた寝言の意味を解するうちに、たちまちその表情は凍りついた。

「おい!今の聞いたかジョニー!!!?」

「……………」

「兄貴が腰動かしながら呼んでた名前………」

「みなまで言うな!」

「けどよぅ……『るふぃ』……って…」

しばし青褪め、互いに顔を見合わせるヨサク&ジョニー。

「………か………紙一重だな」

「………紙一重だ」

その日。
ひょんな事から知ってしまった、敬い慕った兄貴の心。
決して誰にも喋るまい、決して誰にも気取られまい、と、己が墓場まで持ってゆく事を、互いに誓ったヨサク&ジョニーであった。

そんな心優しい二人を乗せて、羊号は今日も行く。





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