ONE PIECE/左

□Sweet×2 Day ―アナタは俺の純然たる起爆剤―
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「なんか変だ、俺」

「ァあ?てめェが『変』なのは、今に限ったことじゃねェだろうが」

呆れたように言うゾロの言葉に、若干気を悪くしたらしいルフィはそっぽを向く。
そうしてそのままゾロを押しのけ、華やかな露天商の間にぽっかり空いた薄暗い路地裏へと、足を向けた。

───なんだってんだ?一体……。

突然のルフィの態度に戸惑いながらも、ゾロは一人奥へと進むルフィの後を追った。


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久々に見つけた小さな島に、物資調達の為に船を寄せた。
それぞれに用事があるという仲間と別れ、ゾロは一人、無謀にも散歩に出たのである。
 
小さな島だが、人も町も活気はあるらしい。道端には様々な露天商が建ち並び、声高に客を呼び込んでいた。
見るともなしに、ゾロはぶらぶらと露天商の間を進む。
と、赤く光る石が目に入った。
派手な装飾品を扱う露天商が大量にぶら下げている、割合シンプルな形のメダインの中に、赤い石が埋め込まれていた。それが反射し、その光にゾロは目を止めたのだ。
途端、ルフィを思い出した。

我ながら単純だと、ゾロは苦笑する。
幾らルフィがいつも赤いベストを着込んでいるからといって、赤い石を見てルフィを思い出す己は、余りに単純だった。
だが気付けば、今まで己が目を止めたもの、心惹かれたものは、どこかしかルフィを思い出させるものばかりだ。

丹念になめした黒い革の手甲は、そのフォルムも輝きも、凛としたルフィの瞳を思わせた。
香を扱う露天商の前を通った途端、鼻をくすぐる独特の香料に、程よく日に焼けたルフィの皮膚を思い出した。
ジャンク品を扱う露天商で、キーキーとがなる猿のおもちゃを見つけた時は、思わず手に取って苦笑した。

ルフィから派生する様々な要素を、ゾロは反芻していた。
だが反芻する度、己の胸に沸き起こる言いようのない幸福感と焦燥感に、自嘲するしか術はない。

───たまんねェ……。アイツは、俺がこれ程惚れきってる事、わかってんのかねェ?

相変わらず、好奇心のみでゾロに付き合っているように思えてならないルフィに、時折戸惑う事がある。
だがそれでも、多くは望むまい、とゾロは思うのだ。
ゾロの気持ちを受け入れ、体までも合わせる関係になったルフィに、これ以上何を己は望んでいるというのだろうか。

『恋する男っつーのは、哀れだねぇ』

こんな時頭を過ぎるのは、いつかサンジに言われた言葉だ。
あの時は一笑したゾロだったが、ルフィと関係を持った今、その通りだと思う事が多々ある。
我ながら、心底情けない。
一体、いつからこんな風になってしまったのか。
小さく溜息をつきながら、ゾロは再びあてもなく歩き出した。

途端、鮮烈な赤が視界に入る。

「ゾロ!そんなに一人でウロウロしてっと、また『迷子』になんぞ!!」

からかうように言うルフィが、ゾロの眼前に立ちはだかっていた。
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