ONE PIECE/左
□Sweet×2 Day ―アナタは俺の純然たる起爆剤―
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にわかにルフィの様子がおかしくなったのは、とりとめもない会話を交しながら二人で町を歩き出して、程なくした頃だった。
視界の端に突然飛び込んだ少年の髪色は、黒だ。
それだけでゾロはルフィの子供時代を思い、目を細めた。
色とりどりの果物を並べる露天商の棚から無断で失敬したらしく、姉と思われる女性に叱られていた。だが少年は、舌を出して姉の攻撃を面白そうにかわしている。どうやら日常茶飯事らしい。周囲の大人達も、その二人の様子をにこやかに見守っている。
より、ルフィを思わせた。
───てめェもよう、アンナだったんじゃねェのか?
そう声を掛けようと、傍らにいるルフィを見やる。が、明らかに憮然とした表情でゾロを一瞥したルフィは、そのまま無言で歩き出したのである。
そうして後を追うゾロの言葉を無視し、ようやく飛び出したのが件の『なんか俺、変だ』という言葉だった。
ひっそりと静まり返った路地は、余りに陰鬱だ。
冷たい灰色の石壁はよそよそしく、上部は厚い蔦に覆われていた。そのままアーチを形作っている蔦は、自然日の光を遮っている。表通りの喧騒がこだまするだけに陰鬱さは増し、己の中にも浸透してくるような、居心地の悪い錯覚を覚える。
そんな路地の中を、一向に速度を緩めず進むルフィに追いつくと、ゾロはちらりとその表情を伺った。
ゾロの視線に答えるように顔を上げたルフィは、珍しく何かを考えているようだ。新しい島に降り立って輝いている筈の好奇心の固まりのような瞳も、今は若干翳りを帯びて見える。
この路地のせいにしてしまえば、良いとは思う。
だが、ゾロの視線を受けつつ時折剣呑な色を見せるその瞳は、見過ごすには余りに強い光を放っている。
───ンな眼、してんじゃねェよ…。
軽く舌打ちしつつ、ゾロは未だ憮然とした表情で歩みを止めないルフィの腕を掴んだ。
ピタリと、ルフィが立ち止まる。
「───どうしたよ?」
意を決したように、ルフィはゾロを見据える。
「だから、変なんだ」
「だから、どう『変』なんだ?」
そのゾロの言葉に苛立ちを抑えきれぬような体で、ルフィは突然ゾロを石壁に押し付けた。
同時に強く腰を押し付け、擦り付けられる。
硬く脈打つルフィの感触に、心臓が跳ねた。
「───わかんねぇのかよ、ゾロ」
胸倉を掴み、挑むような体で顔を寄せてくる。
「俺の事好きなら、わかんだろ!?ゾロ───」
ゾロの瞳を真直ぐに見つめながら、ルフィはゾロの唇を覆った。
普段の、好意のみをぶつけてくるガキのようなキスではない。有無を言わせぬ勢いで、舌を捩じ込んでくる。
絡められる舌が、熱かった。
いつもゾロがそうしていたように、ゾロの舌を吸い上げ、軽く噛締めている。
胸倉を掴んでいたルフィの腕は、ゾロの肩に置かれた。より強く、壁に押し付けられる。親指の腹で鎖骨を撫でられ、その刺激に眉を寄せる。
角度を変えて深く侵入してくる度、ルフィの口から荒い吐息が漏れていた。
「は…ぁ…ゾロ………」
「ルフィ………」
ルフィの瞳が、己を映して揺らぐ。
ぴしゃりと音を立てて、下唇を舐め上げられた。
腰が、疼く。
言いようのない痺れがゾロの腰を取り巻き、解放を求めて暴れ出す。
───やべェ………。
今この場で、ルフィを抱きたい衝動にかられた。己が押し付けられている冷たい石壁にルフィを押し付け、背後から突き上げたい衝動にかられた。
ゾロは軽く頭を振る。
尚も唇を合わせようと近づくルフィの後頭部を鷲掴みにして、強く引いた。
「いてぇっ!何すんだ!!」
あからさまに抗議の目を向けるルフィの額に、己の額を合わせた。その行為だけで、瞬時に全身が熱を帯びる。ゾロは、搾り出すように口を開いた。
「…………聞きてェのは…こっちの方だ………何考えてんだ、てめェ……」
「………わかんねぇのかよ……」
「ルフィ………」
わからない、わけがない。
ルフィが求めているものがセックスだという事くらい、いくら鈍いゾロにも察しはつく。
だがしかし、いくらその黒い瞳を覗いてみても、ルフィの『真意』を計る事は出来ないのだ。
絡めとられたように、動く事すら出来ない。
強く押さえつけられた肩に食い込むルフィの指が、ビリビリと腰に響く。
「───放せ」
「断る」
ルフィの顔が、再び近づいた。掠めるように唇をなぞると、そのままゾロのピアスを口に含み始めた。微かに耳朶に触れるルフィの唇が、熱くてならない。
舌でピアスを弄びながら器用にピアスを食み、一本一本抜いてゆかれた。
「クッ………ルフィ…」
「へへっ。イタダキ………」
口中に含んだ三本のピアスを自分の手の平に落とすと、満足そうにルフィはポケットに入れる。その様を凝視するゾロに、しししっと笑いかけながら、ルフィは再びゾロの耳を食んだ。
綺麗に貫通しているゾロのピアスホールを、舌で突付くようにしてルフィはなぞる。
軟骨を舐め上げられ、穴に舌を突き入れられた。ダイレクトにこだまするルフィの呼吸に、ゾロの全身が粟立つ。ぴちゃぴちゃと響く音が、一層ゾロを煽った。
「ル…フィ………ここじゃ、マズイ……………てめェ、犯されてェのか?あ?………」
「……………構わねぇ…」
「ァあっ!?」
「構わねぇ」
言いながら、ルフィはすでに猛りきったゾロの腰に、尚も腰を擦り付けた。
───限界だった。