ONE PIECE/左

□The shock!!! [case1:Nami] ―ひとやすみ―
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「上空寒気の影響で、不安定な一日。昼頃までは晴天。南の空に───極小さな規模の雷雲の発達も伺える。局地的な豪雨の恐れあり……と」

夜明けと共に、ナミは起き出した。
常日頃そうしているように一つ伸びをし、空を仰いで天候を予測する。
 
───雷雲の動きが気になるけど、とりあえず問題なし。………さてと、アイツらは……まだ寝てるか…。

満足げに頷くと、ナミは、自分の船の傍らに並ぶ一艘の小船に目をやる。
『手を組んだだけ』というナミの言葉を無視して行われたささやかな宴の余韻が残っているのか、ナミは、そこに眠る馬鹿二人の姿を思い、苦笑した。
船と呼ぶには余りにお粗末な彼等の船は、一回り大きいナミの船の影に入っている。
その影の中にいる二人の様子は、まだ十分明るいとはいえない夜明けの海上ではなかなか判断がつかない。
それでもナミは、どこか眩しい者でも見るように、彼等の様子を伺った。

瞬間。
ナミは凍りついた。


++++++++++++++++++++

「はぁっ?!じゃあアンタ達、まだ出会って間もないわけ?」

「まァな」

半ば呆れを含んだナミの声に、ゾロはニヤリと笑って返した。
ルフィはといえば、どこが良いのか、ナミがバギーの子分から奪ったちっぽけな船をしきりに羨ましがり、町を出てからしばらくすると、いきなり乗り込んできた。
しばらくはナミも相手をしていたのだが、どうにもテンションの高いルフィについてゆけず、仕方なくゾロの眠る小船に移動した。
てっきり眠り込んでいると思ったゾロは、空気の動く気配を敏感に察し、むっくりと上体を起こしてナミを伺う。
なんとなく、黙っているのも間が持たなかった。
そうして、ナミはゾロの隣りに座り込んで二人の出会った経緯を問い始めたのだ。

能力者である『ルフィ』と元海賊狩りの『ゾロ』
奇妙な取り合わせなのだが、各々滅法強く、また息が合っている。
だから当然、ナミは二人がさぞかし長く共に過ごしているのだろうと思った。
つい先刻、ある意味滑稽だとも言えたバギー戦でナミが目の当たりにした二人の戦いぶりは、互いに絶大なる信頼を抱きあっている者同士のそれだった。
にも関わらず、未だ出会って数日だという。

「でもアンタ、確か海賊狩りだったわよね?それがなんでまた……───あーいいわ、なんとなくわかる。アンタもアイツに強引に誘われたクチじゃない?」

言いながらナミは、未だバギー船で一人はしゃぎ回っているルフィへ、顎をしゃくってみせた。

「ハハハッ!察しがいいじゃねェか。まァそんなとこだ。しっかしお前もエライ奴に目ェつけられたよなァ。素直に同情する。アイツのしつこさは並じゃないぜ?何しろ、海軍に奪われた俺の剣をぶん取って、そいつをタテに強請ってきやがったようなヤツだからなァ」

「どーゆー状況よ、ソレ」

「ま、悪魔の息子ってこった」

 そう言いつつも、如何にも楽しげに話し出すゾロの様子を見ながら、ナミは思った。
 
海賊専門の泥棒であったナミの耳にも、当然『魔獣』と呼ばれたロロノア・ゾロの『噂』は届いていた。
『噂』ほど、信憑性のないものはない。しかも、所詮海賊達の『噂』である。
本来ならナミは海賊達の交わす噂など、話半分にしか聞かない。
だかしかし、そこここの海賊船で囁かれた『魔獣』の噂に関してだけは、ナミも一種畏怖めいたものを感じていたのだ。

ただ───斬る。

装っていても、ナミは海賊船にいる以上海賊である。
一番出会いたくない相手だと、思っていた。

それがどうだろう。
今、自分にこうして面白そうにルフィとの出会いを語るゾロには、『魔獣』の影など微塵もない。
そしてたぶん、ゾロをそういう風にしたのは、あのルフィなのだ。
確かにバギー戦だけで、ナミにはルフィが見た目よりもそう『子供』ではないと感じた。

けれど。

何故こんなにもたやすく、『仲間意識』というものが持てるのか?
ナミは不思議でならなかった。
利用価値があると思って手を組んではみたものの、案外、二人のそんな所に興味を惹かれて、共に行く気になったのかもしれない。 
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