ONE PIECE/左

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「アホかっっっ!!!」

言うなり、ナミは力一杯拳でルフィを殴りつけた。

「つーかアホよっ!アンタって男は…賞金首なのよ!?それをよくも死刑台なんかに上がったわね!目立つ行動すんじゃないって、あれほど言ってんでしょーがっ!!落雷に助けられなかったら死んでんのよ!?」

「そうだぞルフィ。お前仮にも船長なんだからよ、もちっと考えろ。なんなら俺が今から船長になってやってもいいんだぜ?」

「まったくだ。クソゴムにも程があるぞテメェ。ナミさんにここまで心配させるたぁ何事だ?あ?」

『ひとつなぎの大秘宝』の存在を残し、その身を散らせたゴールド・ロジャーの死刑台にて同じ運命を辿ろうとしていたルフィは、再び危機に陥っていた。
 
慌ただしい進水式を終え、『腹へった』とがなるルフィの声を合図に、ひとまず総員は夕食をとっていた。迫り来るグランドラインに否が応でも興奮は高まり、いつにも増して騒々しく、遅々として進まない夕食だった。

だが、その食事もようよう終盤に向かい、ルフィが自分の死刑騒動を笑いながら話し出した時だった。
フォークを持ったナミが、轟然とルフィに襲いかかったのである。そのナミの行動に即座に加勢したサンジは蹴りをいれ、もちろんナミについた方が良いと判断したウソップもそれに加わった。

ついにルフィは徒党を組んだ三人に取り囲まれ、余りに軽率な行動を攻め立てられていた。
ただゾロだけは、別段ルフィに助け舟を出すわけでもなく、腕を組みながらその様を傍観している。

「けど………生きてっぞ?」

「うっさいっっっ!!!」

怒号と共に、ナミはもう一発殴りつける。
ナミに殴られ、サンジに足で小突かれ、ウソップに延々と小言を言われ続けるルフィは、それでもどこ吹く風という体で、「生きてんだからいいじゃねーかよー」という言葉を繰り返していた。
 
そんな中、ルフィにとっての好機が訪れる。
 
嵐に煽られたゴーイング・メリー号が、大きく揺れたのだ。
その揺れに足をとられた三人は、ルフィを取り囲んでいた円陣をあっさりと崩した。

「お!なんかすげーな!しっしっしっ!見てこよう〜〜〜」

「ちょっとアンタ!今言った事聞いてたの!?軽率な行動は慎めって………ルフィっ!!!」

ナミの言葉もむなしく、ルフィは弾丸のようにキッチンから飛び出していった。

「ぶっ!わはははははっ!アイツ…この嵐の中何を見るっつうんだよ!なぁ?」

「…………………笑い事じゃないわよ」

「ひぃっっっ!!!」

誰の目にも明らかなほど激怒しているナミを見やり、ウソップは思わず小さな叫び声を上げた。

「………ウっっ!と、突然『キッチンにいてはイケナイ病』が……」

呟きながら、そそくさとキッチンを後にするウソップだった。
 
扉が閉まると同時に、ナミは頭を掻き毟って叫ぶ。

「あーーーっもうっ!!!ほんっと疲れるわアイツといるとっ!!!」

「まぁまぁナミさん、今おいしいハーブティでも入れるからvv」

「頼むわサンジくん……。───ところで」

ルフィのみならずウソップまでも逃したナミが、途端矛先を変えてじろりとゾロを睨む。

「アンタ何ぼさっとしてんのよ。さっさとあのバカ見て来なさいよ」

「ァあ?」

「ナニよ!?元はと言えばアンタがアイツから目を離したからでしょうが!!!今度の嵐はこないだみたいにすぐ収まるもんじゃないわよ!!!」

言われなくとも、ルフィを追うつもりだったゾロだ。
だがしかし、指図されて向かうのはさすがにおもしろくない。
しぶしぶという体を装いながら、ゾロはゆっくり酒棚へ向かう。そうして丹念に銘柄を選び、一本抜き取ってからようやくキッチンの扉へ手をかけた。

「なぁ〜に格好つけてんだか!」

「いやまったく」

後ろから揶揄するように言う二人を無視して、ゾロはキッチンを後にした。
 
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