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□ご褒美
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「ゴホッ…ゴホッ…」
季節は夏から秋へ変わり。しっかり風邪を引いてしまった私。
(…きついなぁ…)
身体は鉛のように重い。
(まだ…仕事中か…)
枕元の時計を見れば、愛しい恋人はまだ仕事をしている時間。
風邪を引いて部屋の中に1人いると、こんなに心細いのかと思う。
熱のせいなのかうつらうつらしてくる。
(…花さん、早く帰ってこないかなぁ…)
そのまま私は、睡魔に身体をまかせ眠りに落ちていった…。
━…再び意識が浮き上がったのは、額に冷たい感触があったから。
ゆっくり瞼を開けると恋人の姿が目に入る。
「は…なさん…?」
かすれた声を絞りだし、恋人の存在を確かめる。
「そぉよ…寂しかった?」
こくり、と頷くとゆっくり髪を撫でられる。
「…これ、ゆめ…?」
まだ、仕事してる筈の時間なのに…。
「やぁね。夢じゃないわよ…。あ…熱が上がってきてる?」
体温計どこだったかしら…と側を離れようとする花さんの服の袖を掴む。
「…寂しい?」
「…ん…」
ぎゅっと抱きしめられ、頬にチュッと口付けられる。
「…傍にいるから」
耳に響くテノール。
それに安心し、ゆっくり瞼を閉じる。
「おやすみ…」
(…これ、夢じゃないと良いなぁ…)
そして私の意識は、また深い所へ沈んでいった…。
━…再び意識が浮上すると私は花さんに抱きしめられる格好で眠っていた。
「…花さん?」
すぅすぅと寝息をたてて眠る彼をぎゅうっと抱きしめる。
(仕事、忙しいのに…)
きっと、抜けて来てくれたんだろうと容易に想像がつく。
「ありがとう…」
「お礼なら、こっちのほうが良いわねぇ…」
目線を上げると、彼が唇に指を当てにこやかに笑っていた。
「…風邪、移っちゃいますよ?」
「看病したご褒美よ。それに…移ったら看病してくれるんだろ?」
ニッと笑う彼に、私はそっと口付けた…。