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□少しだけでも…
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秋晴れの心地よい日。

私は、カフェで親友と過ごしていた。

予定のない休日。

(…いや、予定はあったんだけど)


『すみません…。友人の店の立ち上げに行かなければいけなくなりまして…』


という、連絡が無ければ今頃恋人とゆっくり過ごす予定だった。
そこにタイミング良く親友からカフェに誘われ今に至る。

(まぁ…、仕事じゃしょうがないけどさ…)

ただでさえ忙しい人なのに、そんな事して大丈夫なのかと心配にもなる。

…不安にもなるし。

「……ちょっと…、話聞いてる?」


「えっ!……あー…ごめん、何だっけ?」


もぅっ、と頬を膨らませカフェのホールを指差す。

「ほら、あの男の子達かっこよくない?」


彼女の指差す方を見ると、確かにかっこいい男の子達がいる。


「…ほんとだ」


「あ、そう言えば、彼氏出来たって言ってたわよね?…紹介しなさいよ〜」


ニヤニヤと笑いながらスプーンで私を指す。

(…紹介しようにも、仕事でいないんじゃねぇ…)


その時、私の携帯がメールの着信を告げる。



バックに入れていた携帯を取り出し、確認すると。


(あ…!正臣さんだ)

メールはたった一行。


『今、どちらですか?』


あわてて返信する。


『アムールってカフェにいます』


「なぁに?顔、にやついてるわよ?」


「内緒!」


「彼氏からでしょ〜?……ちょっ、めっちゃかっこいい人入ってきた!」


振り向くと、背の高い男性が入ってきていた。
男性はショーケースに入っているケーキを数種類選んでいるようだ。

(…あ…、正臣さんに似てる…)
「失礼します…。あちらのお客様からお客様方に…と」

目の前に数種類の色とりどりのケーキがズラリと並ぶ。

「え?」


店員さんが指差す方向を見ると、正臣さんがケーキをテイクアウトする所だった。

「正臣さん!」



こちらを見ると、軽く手を上げ直ぐに店を出ていく。

「知り合いなの!?」


「ん…。彼氏…」


えぇっという驚いた親友の声を聞きながら、私は今届いたメールを眺めていた。

『お友達と一緒の所お邪魔しました。…少しでも逢えて良かった。では、また後で』



少しでも、逢いたいって思ってるの…私だけかと思ったよ?


不安だった心がほどけていく…。


「さっ、ケーキ食べよう!」


「ちょっと、ちゃんと紹介しなさいよね!?」


「はいはい!」





秋晴れの日の時間は、ゆっくり過ぎていった…

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