さくらくらくら

□お願い、最後に好きと言って。
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銃口を其の黒く柔らかい髪に向けた。
彼は驚きもせずに其のまま書類整理をしている。
ずっと何も言わないから気づいてないのかと思ったけど彼に限ってそんなはずは無い。

しばらく待ってると彼が沈黙を破った。

「何?」

銃口を向けられて平然とできるのは彼だけだろう。
流石、と言ったところだろうか。

「委員長、ボンゴレの人だったんですね」

何其れと返事が帰ってきた。
驚いたけど彼らしいと思う。
自分の道を行く浮き雲。

「カルカッサファミリーって知ってますか?」
「知らない」

即答だったのが彼らしく笑えた。

「ボンゴレファミリーを敵対視するファミリーです。私、其処の人間なんです」

ふーん。興味無さそうに彼は言う。
きっと彼はこの後に続く言葉がなんだか分かっている。









「敵だから、貴方を、殺さなくちゃいけないんです。」
「そう」




書類が一枚終わったらしく、彼は次の書類に目を通し始めた。
後ろに立っているせいで彼の表情は見えない。

「怖く、ないですか?」
「何で?」
「だって、銃向けられてるんですよ?」

表情は見えなかった。
けど彼が笑った気がした。








「怖くなんてないよ。だって君は、」






――僕の事、打てないでしょ?







笑みが零れる。貴方は凄い。
だから風紀委員として貴方に着いてきた。
だから貴方は私の憧れだった。





銃口は彼の頭から離れて私の頭へと向く。そう、最初から其のつもりでした。

私は―――






「私は、貴方を、殺せない。」





「うん。知ってる。」

彼は優しい声色で言ってくれた。

「でも貴方を殺さないと私はあいつらに殺されてしまいます。だから、」





貴方の手で殺してください。なんて言ったら貴方は困りますか?
本当はそうして貰いたい。
愛している人の手で逝きたい。
でも、其れは我が儘でしょう?




「僕が、逝かせてあげようか?」

ゆっくりと振り返りながら妖艶に彼は言った。
嗚呼、やっぱり貴方は凄い。
私の思ってることをぴたりと当ててしまう。



        ・・・・
「お願いします。雲雀さん」



彼の手と私の銃を握っている手が重なった。
愛しさが込み上げる。


「お願い、最後に、」

何故か頬に暖かいものは流れた。





彼は妖しく微笑むと私の耳元に唇を寄せた。







「愛してる。」



頭が、身体が、視界が大きく揺れて赤に染まってゆく。
私は幸せ者だ。
愛する人に愛を囁かれ愛する人に逝かせて貰えた。
例え其の愛が偽りでも、いい。



















最後に見たのは微笑みながら涙する愛しい人の姿だった。



















お願い、最後に愛してると言って。
(欲をいうともう少し貴方と一緒にいたかった)(愛してたよ、本当に。)


 
 

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