さくらくらくら
□聞こえない鼓動
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人には寿命がある。それは人それぞれ違っている。長い人も居れば短い人も居る。そして私は短い人なの。
いつの日かマスターはそう言っていた。
私は少しだけ短い人なの。
と。
機械の俺には寿命がないからよく解らない。
でも、少しだけと言うのはどうもおかしい気がした。
14歳で死ぬのは少しだけなんですか?
そう聞くとマスターは微笑んだ。
世界にはもっと短い人が居るの。生まれてすぐに死んでしまう子供とか、ね。それに比べたら私は少しだけよ。
俺は言った。
それでも貴女は短いです。
マスターは少し黙った。そして言った。
確かに短いかもしれない。…ううん。短いわ。
それでもカイトと出逢えたから、短かったけどとても幸せだったと思える。
そう言ってマスターは俺の手を握った。とても、温かかった。
マスター。本当に貴女は幸せだったでしょうか?
ずっと病室にいた貴女の人生は一般的に幸せだったといえたでしょうか?
機械の俺には何も解りません。
でも、これだけは分かった気がします。
貴女の寝顔はとても幸せそうに微笑んでいる。
俺は貴女の幸せを願って、そっと歌を詠いました。
聞こえない鼓動
(貴女が幸せだったことを願っています。)
(おやすみなさい。俺のマスター)