短編

□恋の秋
2ページ/4ページ




「あいつな、いくら俺があっつーーーい視線送ってもまるで気付かんのや。鈍過ぎなんも罪やなぁ…せやけどそんなとこ含めて可愛ぇんやで。そんでや、…………」

この男にここまで好かれている相手は一体どこの誰なのだろう、と考えてから五分、惚気られていると気付いてから七分、勝手に喋り始めてから十分。
いい加減やめてくれと頼み込んでしまいたい。それは適わないのかもしれないとようやく感じ始めていた。
そしてそろそろ練習再開の時間だ。

「シゲ」
「あの白い肌とか、どこまで無自覚に誘っとんねん。」
「おい、シゲ、」
「無自覚ってのもほんま罪なんやで、わかっとんのかアイツは。」
「無自覚ってことに気付いてないなら無理だろ。

……じゃなくて、シゲ!!」
ノリ突っ込みをかまして水野は佐藤を睨み付けた。
「なんや」
「何じゃない、練習再開だ!」
「あー俺休んでてええ?なんややる気でんわ。」
ヒクリ、顔が引きつるのが分かった。
何とか気持ちを落ち着けて、瞬時に言葉を思い付いた。

「シゲ、その娘にかっこよく見られたくないか?」








.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ