短編

□恋の秋
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「爆発してまいそうや。」
「は?」



恋の秋



快晴。
夏と秋の間というのはとても心地良い。
太陽が照り、それでいて暑過ぎることがない。涼しい風が吹くからだ。
秋は芸術の秋だとかスポーツの秋だとか色々言われているけれど、好きなことを年中している彼らにはまるで関係ない。
ここ桜上水サッカー部とて同じで、練習に打ち込む姿は普段と何等変わりない。




「・・・あかん、これはあかん。」
金髪が緑に座り込んで、小さくそう呟いた。

「シゲッ!!」
コートから外れて座っている金髪を目敏く見つけて、コーチと共に指導していた水野は睨み付けて。
「なんや、たつぼん。今俺は休憩中やで?」
「誰が勝手に休んで良いって言った?」
「俺。」
「お前な…」
この男と話していても埒が明かない。
「しょうがないな……」
こういう時の対処法を心得ていない水野は、松下の元へ向かっていった。
「はあぁ……」
大きく溜め息を吐いて、後ろに倒れ込んだ。まだ緑の匂いがする。
グラウンドを見てみると、バラバラとチームメイトたちがわらわらと散らばっていくのが見えた。どうやら休憩に入ったようだった。
黒い服の彼はDF陣と何か話していた。
「はあぁぁああ………」
「何溜め息なんて吐いてんだよ。」
呆れたように水野が声を掛けてきた。
「坊には関係あらへん。つかこの気持ちは分からんわ。」
「気持ち?」
「せや。この俺のあいつに対する気持ちが、分かるわけないわ。」
何だよそれ、と問い掛けるよりも早く、佐藤は溜め息を吐いた。
辛うじて分かったのは、
「シゲ…おまえ、好きな人いるのか?」
それだけだった。


そして冒頭部のセリフである。突然にも程と言うものがある。



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