駄文

□支離滅裂。
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 溢れたのは、俺。

 感情は、壊れていた。

 ただ壊したかった。

 ただ求めていた。

 ただ愛しかった。

 ただ側にいたかった。

 綯交ぜの感情はやがて一つの結論に行き着いた。





「壊してしまえ。」





 大切な物を他人に穢される位なら、その前に俺自身が穢してやろうじゃねぇか。

 喩え嫌がられても。

 喩え拒絶されようとも。

 喩え涙を流されようとも。

 喩え残り僅かな良心が痛んでも。



 かごめが俺の物になるのなら、それで良かった。



 騒がれても泣き叫ばれてもこの身を叩かれ必死に抵抗されたとしても、構いはしない。

 その軽やかな声音を潰して、叫べなくしてやろう。他人に助けを求めても声が届かない様に。

 その黒目がちな瞳は目隠しで塞いでしまおう。どんな景色も何もかも映せない様に、俺だけを瞼に焼き付かせて。

 その唇は俺の唇で塞いでやろう。嫌と言っても無駄だ、お前の声はもう届かない。俺の壊れた心にはもうきっと届かない。

 その細く白い腕は縛って俺に括り付けてしまおう。二度と俺を置いてお前が何処かへ行ってしまわない様に、そして俺が迷ってしまわない様に、何時でもお前に帰って来れる様に。

 その小さな身体は俺が護ってやろう。どんな野郎の目にも誰の眼にも触れる事は無い。俺がこの身を盾にして檻にして、お前と言う名の鳥を閉じ込める。



 こんな俺が憎いなら、憎めば良い。好きなだけ憎め。

 それでも良い位、良いと思えてしまう位…俺はかごめが欲しくて堪らなかった。

 何を求めているのか。



 俺はかごめの全てを、命さえも儘にしたくて。

 身体を犯して満足する物なんかじゃねぇんだよ。

 一時の快楽に身を任せて、かごめを自分の物にした様な気がしたけれど、それは所詮偽りの様な気がして。

 押さえ込んだ筈の欲望はいとも容易く俺の正気を蝕んでいく。

 もう、元の俺に戻る事は無理だったのか。



 如何する事も出来ず、ひたすら我武者羅にこの闇から、どす黒い感情から、醜い欲望から逃げ出したくてもがき続けた。

 差し伸べられる手は期待していなかった。

 光が見えない、暗い、寒い。



 感情が、堕ちて逝く。

 深い深い、闇の底へ。

 何の音もしない。

 記憶と欲望と感情の深淵へ。



 沈んで逝く。



 求めた物すら掴めずに。



 愛していたのは確かな筈なのに、何時しかその表現は狂い始める。

 いや、狂ってなんかいない。



 愛しているから、だからこそ。



 この感情が震える。

 想いが、欲望が、全てが。

 かごめを欲しているんだ。



 闇の底から俺を引き上げるのも、そして再びどん底へと突き落とすのも…かごめ。



 いつも感じていた、かごめが帰った後の残された感覚。

 かごめがいなくなると、途端に世界が俺に背を向ける。

 「只の気鬱だ」と人は笑うだろう。けれど、俺にはそんな風に片付ける事はできねぇんだ。

 かごめがいなければ、この広い世界の何処にも俺の居場所は無くなる。



 かごめだけが、俺の居場所。



 やっと見つけた、安息。



 手離したくない。



 たとえこの手で穢し壊そうとも、かごめが居るのならばそれだけで良かった。
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