駄文

□酔い醒め。
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 遠のく意識の中で、一つの考えが頭を掠める。





「もう二度と犬夜叉にお酒なんて飲ませないっ…。」





…********…



 それは、4時間程前の事。犬夜叉とかごめは、二人で森の中を歩いていた。

 他愛ない取り留めの無い話をしたり、少し良い雰囲気になってみたりと楽しく散歩の様な気分で二人は木漏れ日の差す静かな森の中を小枝を踏みしめながら歩く。



 …と、その途中で突然犬夜叉が口を開く。



「…かごめ、なんか飲めるもん持ってねぇか?」
「?どしたの、喉渇いた?」
「おう…。」
「んーと、ちょっと待って…。」



 かごめは思い付いた様にその場に腰を下ろし、リュックの荷を解いて中をゴソゴソと漁る。

 そんなかごめを犬夜叉は立ったまま不思議そうな目で見下ろす。



 すると、リュックを漁るかごめの指にコツン、と硬い缶が触れる。



「あっ…あったぁ!!」
「おー?」
「はい、コレ!!」
「…んだぁ?コレ…。」



 渡された缶をまじまじと色んな角度から舐める様に眺め、訝しんだ声を上げる。



「多分リンゴジュースだと思う…。」



 ちら、と犬夜叉の持つ缶に目をやり、かごめはそう答える。

 なるほど、確かに缶の表面にはいかにも瑞々し気なりんごが描かれている。



「多分ってなんだよ…。」
「だって、私こんな物リュックの中に入れたつもり無いもん…。多分草太辺りが入れたんじゃないかな?」
「お、おい。」
「ま、見た感じ大丈夫だから飲んで良いよ!」
「へいへい…。」



 皆まで聞かない内に犬夜叉はぷしっ、と手馴れた手付きで缶のタブを開ける。



 口許まで飲み口を持って行った時、ふと犬夜叉はかごめに声をかける。



「…お前は?飲むか?」
「え?」



 幾ら風通しが良く涼しい森の中を歩いていたとは言え、自分と同じ距離を歩いているのだから。



「疲れてるんじゃねぇのか?」
「ん、心配しないで!大丈夫大丈夫!」
「………。」



 口許から飲み口を完全に遠ざけ、犬夜叉はかごめの顔をじろりと睨む。



「な、何?犬夜叉…。」



 少し身を縮めて、かごめは犬夜叉を見上げる。



「…嘘だろ。」
「へ?」



 いつもこの女はそうだ。

 …俺の事ばかり考えて心配する癖に、自分の事は常に後回し。きっと今だって疲れている筈なのに。

 少し位、弱音を吐いてくれても良いのに。



「仕方無ぇな、ここらで一寸休むか。」
「えー?如何言う風の吹き回し!?」



 いつもなら考えられない事だ。

 犬夜叉の方から「休む」なんて言葉が聞けるとは。

 それもこれもきっと自分の事を思ってくれての事だろうと考えると、少し心がこそばゆい。



「休むぞ。」
「…はい。」



 …口は悪いけど。



 有無を言わさない犬夜叉の一言。

 これもきっと、彼なりの愛情。



…********…
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