駄文

□異界酩酊。
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 お前の居ない世界なんて、考えられない。





 お前の居ない世界なんて、いらない。





 お前の居ない世界なんて、世界とは呼べない。





 呼ばない。





 呼ばせや、しねぇよ。





 そうだろ?





 いらねぇんだ、こんな世界。

 お前がいないこんな世界。



 お前が居た時はこんな世界でも輝いて見えたのに。
 お前が居た時は自分に辛く当たる糞みてぇなこんな世界でも愛せる気がしてたのに。
 お前が居た時はそれでもこんな世界に愛を見出そうと出来たのに。



 お前が、いないから。



 もう、いらない。





 全てが疎ましい。
 俺の隣で幸せそうに生を紡ぎ愛を育むかつての仲間でさえ、今では恨めしい。
 そんなのは余りにも身勝手な感情だと、解ってはいるけれど。

 解りたくない。

 あまつさえ奴らが俺の事を気にかける素振りをする事さえも俺には疎ましい。





 放っといて欲しい。




 お前らは、良いだろ?

 お前らには、解らないだろ?



 何で…俺を気にかける。
 もう、放っておいてくれ。





 お前らはこれから幾らでも見つめ合えるだろ?

 お前らはこれから幾らでも契りを交わせるだろ?

 お前らはこれから幾らでも…。





 見ている事さえ辛いから。

 寄らないでくれ。



 俺はもうあいつに会えないかもしれないのに。

 思いを馳せる事さえ辛くて辛くて辛くて辛くて辛くて如何仕様もないと言うのに。





 この世の全てが、今では憎らしい。

 際限の無い憎悪。

 当て所無いどす黒い感情。

 尽き果てぬ想い。

 掻き鳴らすかの様な胸の動悸が、余りに激しく痛く高鳴る。

 あいつと一緒に居た時には忘れていた筈の感情が、鎌首をゆっくりと擡げる。










 「コンナセカイ、コワシテヤル」










 愛せなくなった。

 幼い頃からあんなに酷い仕打ちを受けてきた最低な世界だったけれど、あいつがいるだけでそれさえも如何でも良くなった。

 許せる様な気がしてた。

 許そうと思っていた。





 今思えば、恐ろしい程の思い上がりと浅はかさだ。





 あいつの居ない世界で、俺に何を思えと言う?

 何を、思えば良いと言うんだ?





 それこそ残酷だ。





 だから、こんな世界いらねぇ。

 そして、そう思ってしまう馬鹿な俺もいらねぇ。





 こんな俺、いらねぇ。

 あいつが居なければ生きて行けない。
 此処まであいつにこの俺が入れ込むだなんて、途轍もなく笑い種だ。

 一人の女さえ幸せに出来ない。

 愛した女さえ、守り抜けない。

 あいつがいないこの世界で空を見上げる事無く、ただ地を這う様に低い所を駆ける獣の様に生きて行く俺を、誰かどうか哀れだとでも思うのなら。





 どうか、どうか、どうか。





 一思いに突き殺してやってくれないか?





 一人では、自分では、卑怯な俺は死ぬ事は出来ないから。



 どうか。





 何時か会えるかもしれないなんて、空虚な夢を追い続けるのは余りにも過酷だ。

 それでも、生きなければならないのか。





 こんな残酷で綺麗事ばかりな世界、壊れてしまえば良い。










 俺が、壊してやる。










 あいつのいない世界なんて。
 

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