駄文
□凍。
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「寒ィな…。」
吹き荒ぶ雪道を独り歩きながら、ポツリとまるで弱音の様な単語を漏らす。
「寒ィ。」
アイツが俺の前から姿を消したのが、今から凡そ一年前。
一年前のあの日あの時から、俺の心は凍り付いたまま。
眩暈さえ覚えそうな余りに冷酷な時の長さ、そして目まぐるしい流れ。そんな物にさえ、俺の心は動かない。
抗う事さえ許されはしなかった。
「寒ィ。」
あぁ、雪が、俺を、消す。
白く、白く、白く、塗り潰す。
純粋で、儚くて、それでいて途轍も無く非情。
もし此処にアイツが居たなら、きっとこの白銀の世界にも俺は色を見出す事が出来るだろうに。
かごめは、いない。
「…あ、」
そう言えば、何時だったか。あれも確か雪の日だった。
あの日、かごめはいつもと同じ寒そうな格好で、降り積もった雪の中をくるくるとまるで踊るかの様にはしゃぎ回ってから、突然俺の方に向き直って言ったんだ。
「犬夜叉の髪の毛、まるで雪みたい。景色に融けちゃいそう。」
「雪……か。」
いっその事、俺なんて此の侭雪に融けてしまえば良いのにな。なんて考えながら、思わぬ自分の感傷が阿呆らしくなって俺は少し笑った。