□妄想青年
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一人風呂に浸かっていると、余計な事を考えてしまう事はよくある。
話相手が居るわけでもなく、何かをするわけでも無い。
これも時間を持余すって言うんだろうか。
何にせよ、そのちょっとした余計な考えがミスに繋がるなんて、その時の俺は思いもしなかった。
あぁ、明日越野に何から説明しよう…。




―妄想青年




「やべっ、越野に電話しなきゃ」

体も洗った、髪の毛も顔もどこもかしこも綺麗になった頃に思い出した明日の部活に関わる連絡。
すぐにでも風呂場を跡にして電話してしまいたい所だけど、今日はいつもの様にはいかない。
普段はどうしてもガス代が気になってシャワーで済ませてしまう。
それでもたまに、やっぱり熱い風呂に浸かりたい。
そう思う辺り俺は日本人だな…なんてしみじみと感じる。
42度…だったかな。
とにかく、それくらいの温度になると人の体に付いただいたいの悪い菌が死滅するから海外に比べ熱い風呂の好きな俺達日本人は寿命も長めらしい…テレビの受け売りでしか無いけど。
まぁ、そんな長生きとかまでは特に考えてはいなくて、結局はただ久し振りに入りたくなっただけ。
浴室内は白い靄に包まれていて、少し息苦しい。
そんな中、湯気を放つお湯の中に身を落とす。
学生の一人暮らしの部屋に付いた風呂は、俺みたいな男が足を伸ばせる程広くは無い。
今日はゆっくり浸かりたい気分、足を組み右足だけを水面から出し浮かせた。
揺れ動く水面が少しずつ、少しずつ穏やかになる。
足を立て指を上に向け自然と水面に近くなる踵に、重力に逆らう事の出来ない水滴が溜まる。
水滴は大きな玉になり、水面に吸い込まれていく。
踵を更に落とすと、影が落ちた。
またゆっくりそこへと溜まっていく水滴。
水面に映る影にも、同じ様に一粒の玉が浮かび大きくなっていく。
丸いラインに浮かぶ小さな玉。
その玉は大きくなり、本体が重力の都合で下へ向うのと同じ様に伸びる。
何かに似ている。
何かに。
何かに。
……あぁ、そうか。
これは胸だ。
女の子の胸の乳首が少しずつ立っていってるみたいだ。
あぁ、そう言えばさっきコンビニに居た子の胸デカかったな…。
Tシャツに学校ジャージなのに化粧はバッチリ、多分近所の子だよな…あの格好って事は。
いや、つかまず明らかノーブラだったし近所じゃないなら大変か。
ホントもっと考えれば良いのに。
気付かないって思ってるのかもしれないけど、以外とノーブラってすぐ分るんだよな、男から見ると。
まぁ、でもノーブラであのサイズなら立派。
寄せて上げてもしない、パッドも入れないで見応えあったし。
彼女とかにはしたくないけど、見るだけなら有り難い思いをさせてもらってるんだし良いか。
一回で良いからあんな胸触ってみてー…。

「っと、ヤバッ!!越野に電話!」

風呂に入ってからどれだけの時間が経ったのかは分らない、ただ、越野に寝られては困ると体を簡単に拭いて携帯を握る。
あー…っと、連絡、連絡…。

「何だよ、こんな時間に」
「おっぱい!」

ブツと向こうから通話を強制的に終了された音に、焦っていた俺は一瞬何があったのかを理解出来なかった。
……考え事は、程々にしよう。






これを仙越と言い張れる度胸は私には無かった

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