□寝言
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余程の事が無い限り、好きだと言われて悪い気なんてしない。
だから、あの人に対してもそうだった。
勿論俺が好きな相手は別に居るし、向こうもそれを知ってるはずなんだ。
それでも懲りずに好きだと言うから、聞き流すフリをしながらその気持ちを根から否定もしてこなかった。
保険とかじゃなく、真剣に考えてみたかったのと…本気なのかを知りたかったから。




―寝言




「アヤちゃん…」

思わず口から出た自分の言葉に意識がハッキリする。
目は開けてないけど、自分に被る影と甘い匂いに今すぐそこに本人が居る事が分かる。
IH出場の決まった俺達に待っていたのは赤点と言う壁。
4つ以上はIHに出られないと言うのに、俺達湘北バスケ部は俺を含め4人が該当した。
それに危機感を覚えて開かれた勉強合宿も何とか自分のやるべき事を終えて、いつの間にか腰掛けていたソファでそのまま眠っていた。
それに気付いたのは今。
彼女が掛け直してくれたのだろう毛布の存在に気付いて。
いっその事、すぐに目を開けていれば良かった。
今となっては起きるタイミングも逃してる。
どうする事も出来なくてまた眠りに就こうすると、反対側で何かが動いた。
ん、と唸る声にそれが三井さんだと分った。
肩を並べてノートやプリントに向っていた事を考えると、何も違和感は無いしむしろ納得もする。
そしてさっきより大きく体が揺れて、寝返りをうった事が分かる。
うっとさっきよりも悲痛めいた唸り声。
悪い夢でも見ているんだろうか。

「っ……鉄男!」

決して大きな声だったわけじゃないのに、そのたった一言の寝言は益々俺の意識を目覚めさせる。
十分過ぎる程。
好きだと言う言葉や態度に自惚れてるなんて思ってなかったけど、これは酷いんじゃないのか。
結局、そんな声出しちゃう程そいつの存在は大きいのだと知らされたのは確かだ。
どうしろって言うんだよ。










アニメでの勉強合宿の回に言った寝言。
有難う、アニメスタッフ。


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