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「お、そうだ宮城!アイス買おうぜ、アイス」

夏も終りに近付いて、去年までならもう秋になろうと言うこの日。
まだまだ暑い日が続いていた、長い残暑。
二人での帰り道の途中、三井さんが涼しさを求めてかコンビニに寄ろうと言い出し俺はそれに黙って頷いた。
クーラーボックスを前に立ち止まられ、強く腕を引かれる。
財布と味と悩み抜いて互いに一つずつ選んだアイスはザリザリ君。
レジで購入すれば他に何を見るでもなく外へと出た。
コンビニ前のゴミ箱に包みを捨てて、味違いのザリザリ君を互いに食べ始める。

「っあー…生き返る。おい、そっちも一口寄越せよ」
「ちょ、アンタ自分のもう食べたの!?」

まだ半分程度残る俺とは違って、既に棒だけを咥えながら三井さんが見てきた。
視線の先は明らか俺の持ってるザリザリ君。
あげませんよと一言だけ返して食べる口を進める。
分っちゃいたが三井さんがそれで諦めるはずもなく、アイスを持つ俺の手を掴むけど俺も俺で素直に渡す気にはならなくて力を入れる。
そうしている間に溶けるアイスが手を伝った。
冷たい。

「あ!」
「よっし、隙あり!」
手の冷たい感覚に意識を移した瞬間、アイスを口にする為だろう手を引かれる。
けど、溶け出した残りのアイスは二人どちらの口に入る事もなく、地面へ落下した。
あ…!と俺たちの声が重なって、顔を見合わせてただただ声を出して笑った。
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