当×征小説 番外
□空と月と闇A‐堕ちる月‐
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遼は“解らない”と言う顔で、先を促す様に当麻を見つめた。
「……あいつと征士は、表と裏みたいなもんだ。光と闇――理屈とか、そんなのでなくて…本能みたいな所で引き合ってるんだ」
光があれば、闇が出来るように。
征士と悪奴弥守は、多分……対のものだ。
だから、悪奴弥守が征士を求める想いに、征士は抗えない。
「そんなこと……」
「なんか……俺の方が横恋慕してる気になっちまった」
「違うって!当麻!」
遼が、怒ったように声を荒げた。
「……遼?」
「俺たちは……そりゃ最初は鎧の力がきっかけで出会ったけど、今はそれだけじゃないだろ!?力とか…そんなの関係なく、オレは伸や……皆が好きだぞ?」
身を乗り出して一生懸命な遼に、当麻は気圧されて言葉が出なかった。
「当麻だって、光輪の力が無くたって征士が好きだろう!?……それとも違うのか?もし鎧が関係なく出会ってたら、好きになんてならなかったって言うのか!?」
「……そんな訳ないだろう。俺は別にあいつの力に惹かれた訳じゃない」
自分が愛してるのは、光輪のセイジではなく伊達征士だ。
気高く真っ直ぐな、美しいあの魂だ。
「だったら!光だとか闇だとか、関係ないだろ!?征士だって……征士が好きなのは、当麻なんだから!あいつじゃない!」
気持ちが高ぶったのか遼の黒い瞳が潤んでいて、当麻は焦った。
「遼……」
「当麻がそんなんじゃ、征士が可哀想だ……」
遼が、手の甲で零れそうな涙をぐいっと拭った。
ポンポンとその頭を軽く叩いて、当麻は苦笑する。
「悪かった、遼。……泣くな。伸に見つかったら、俺、ただじゃすまないからι」
それでも、遼は拗ねたように当麻を睨んだままだった。
「……もう、弱音は吐かないから」
そう言って当麻が微笑むと、遼はようやく安心したようだった。ほっとしたように、笑顔になる。
一緒に戻ろうと言う遼の誘いを断って、当麻は再び樹に凭れ考え込んでいた。
遼にはああ言ったものの、どうすればいいのか判らないのに変わりはなくて。
長い前髪をくしゃりとかき上げる。
「………征士」
その名を口にすると、切なくなる。
当麻は泣きたくなるのを堪えるように、眉を寄せた。
《続く》