当×征小説
□続 19歳 盛夏
1ページ/1ページ
「…っ!」
首筋に口付けられて征士が身体を強張らせると、当麻が心配そうに顔を覗き込んだ。
「征士…。やっぱ、止めとく?」
「……聞くな馬鹿者」
「…けど、これ以上いったら俺、多分止まらない」
「止まらなくて、いいから―――」
促すように征士がキスをすると、逆に激しく唇を奪われた。
「…っふ、ん……」
いつものキスとは違う貪るような口付けに、征士はすがるように当麻の肩を掴んだ。
「……っあ!」
シャツの釦を外され当麻の唇が胸を辿ると、自分の物とは思えない声が出て、征士は恥ずかしさで唇を噛む。
その間にも、当麻の手が下肢に伸びていて、征士の身体がビクリと跳ねた。
「………っ!」
敏感な部分を愛撫されて、征士は必死で声を殺した。
「……っく……」
「征士…。声、聞かせて」
噛んだ唇を解くように口付けられて、しかも愛撫の手は緩められなくて―――征士はいやいやをする様に頭を振った。
「や……当麻…っ。あ、ぁ…っ」
上擦った声が出て、征士は羞恥に涙が出そうになった。
「愛してる―――」
耳元で囁かれる声にすら、身体が反応する。
当麻が触れていく側から、今まで知らなかった感覚が征士の身体を侵略してゆく。
それは思考までにも及びそうで、征士は“恐い”と思った。
自分が自分で無くなりそうで、そんな自分を当麻に見られることが恐ろしくて。
「や…っ。いや…っだ!当……麻…!やめ……」
当麻は、自分を押し退けようとする征士の手を捕って、シーツに押さえ込んだ。
上から征士の顔を覗き込む。
怯えたような菫色の瞳が、涙に濡れて当麻を映していた。
「止まらないって…言っただろ?」
熱っぽい様な、艶っぽい様な瞳で自分を見つめる当麻を、征士は茫然と見上げる。
「……当、麻……」
白い頬を、涙が伝う。それを掬うように、当麻はそっと口付けた。
「大丈夫だから……。全部見せて―――」
「当麻………」
ずっとずっと手に入れたかった愛する人の身体を、当麻は抱き締める。
しなやかな白い身体は、当麻が与える快楽にほんのりと色付いて綺麗だった。
穿たれた欲望に苦しそうに啼いて、征士は当麻にすがる。
宥めるように口付けて、当麻はもう一度強く
征士を抱き締めた―――
*********
征士が目覚めると、当麻の心配そうな瞳が目に入った。
「……当麻?」
「大丈夫か?……征士」
何が――?
と思ったが、自分も当麻も裸なのに気付いて、昨夜の出来事がいっぺんに征士の頭に蘇った。
かあっと顔を真っ赤にして征士は布団に潜り込もうとしたが、腰に走った激痛に呻いて布団に突っ伏した。
「〜〜〜〜〜っι」
「大丈夫か?征士。………ごめんな」
「謝るな…馬鹿者」
……誘ったのは、私だ。
征士はそっと当麻を伺う。
全く……情けない顔をして。
恥ずかしさも、何処かへ行ってしまったではないか。
「……そんな顔をするな」
当麻の頭を引き寄せて、そっとキスをした。
幸せそうに笑う当麻に、征士も微笑む。
二人の夏は、始まったばかりだ―――
‐END‐