当×征小説
□笑顔とチョコレート
1ページ/1ページ
また、当麻のヤツが五月蝿い季節がやってきた。
所謂“恋人”という関係になってから、毎年2月になると決まって「バレンタインのチョコレートが欲しい」と言ってくる。
バレンタインなど、はっきり言って私は興味がないし、男の私が婦女子の群がるチョコレート売り場に行ける訳がなかろう!
大体、ナスティから毎年貰っているではないか!
と言ってやったら、
「征士のが欲しい…ι」
と言う。
伸は毎年遼から貰っているらしい、とも。
ええい!遼と一緒にするな!ι
伸は大方当麻をからかうネタに使ったのだろうが、私もいい迷惑だ。
ため息をついて、少し離れた目の前の光景を見つめた。
色とりどりの包装紙やリボンのかけられたチョコレートの山。
今年のバレンタインデーは土曜だから、大阪に行く予定だった。
買って行ってやれば、彼奴は喜ぶのだろうが……。
けれど、30半ばの男がバレンタインのチョコレートを買う姿はやはり異様な光景に見える気がして、これ以上其処には近付けなかった。
今思えば、バレンタインチョコのコーナーを凝視して佇む私も十分異様だっただろうがι
「―――ほら」
我ながら素っ気なく、そしてまた素っ気ないモノを差し出した私に、当麻はタレ目を見開いて暫く固まっていた。
「せ…征士!?これって……」
「有り難く受け取れよ。……其れを買うのも、十分恥ずかしかったのだからな」
其れは、何時でも買える類いのアーモンドチョコレート。
勿論、ラッピングも何もない味気のないものだ。
そっと受け取ってしみじみ眺めて――それから当麻は、私を見て嬉しそうに笑って抱き締めてきた。
「すっっげえ嬉しい!ありがとうな、征士」
自分の顔が赤くなっているのが分かる。
私は…当麻のこの顔に弱い。
けれど、この嬉しそうな顔を見られたのならば買って来て良かった、と思える私も意外に当麻には甘いのだろうか?
◇
「まさかホントに買って来てくれると思ってなかったからさ。じゃあ俺が、とか思って買ってたんだよなー。……貰って?征士」
そう言って当麻が差し出したのは、綺麗な緑色の包装紙に包まれた箱。薄い黄色のリボンまであしらわれている。
「なんかさ、最近は男からあげる逆チョコってのがあるらしいから、俺からでもいいかなーって」
「……私も男だがι」
「そりゃそうなんだけど、まあ、征士は俺の“奥さん”ってことで」
「馬鹿者ι」
しかし、不覚にも妙に嬉しい気持ちになってしまった私も、菓子業界の煽りに乗せられている口なのか。
けれど、こういうのも悪くない。
「……ありがとう、当麻」
当麻はもう一度、私の好きなあの笑顔を見せた。
‐END‐
《あとがき》
あああ
単に自己満足なありがちな話になってしまいましたが
実は自分的には書き足りてないです、省いた部分沢山あります
……省いてこれかよ
普通に書くと、また長〜〜〜くなるので(笑)