過去拍手御礼部屋

□意地悪
1ページ/1ページ

今頃、当麻は悔しがってるだろうなあ。

と、伸はクスリと笑った。

知り合って20年、しょっ中あの二人の痴話喧嘩に付き合ってんだから、この位の意地悪はさせて貰いたい。
………まあ、自分から首を突っ込んでる事もあるんだけれど。


「―――伸?どうかしたのか?」


ローテーブルの前に座った遼が、少し首を傾げて此方を見ている。
伸はにっこりと笑ってみせた。


「なんでもないよ。ちょっと、思い出し笑いというか…」


「……伸、やっぱりあれはわざとだな?」


黒目がちな瞳をちょっと細めて遼が言って、伸は内心ドキリとする。


「え?何が?ι」


「当麻と征士。二人きりにしない様に、わざと秀も同室にしただろ?……他の部屋は片付けてないとかなんとか言って」


あはは〜。
と、伸はちょっと苦笑した。


「やだなあ〜、遼ってば。………なんで解るのさ?」


「解るってι当麻だって解ってると思うぞ。……征士は気付いてないだろうけど」


伸がやりそうな事だもんなーι
と呟く遼に、伸はすり寄った。

少し下から、上目遣いに遼の顔を覗き見る。


「意地悪な僕は嫌い?」


「き…嫌いな訳ないだろ。オレはどんな伸でも好きだし」


大体、その位で嫌いになるなら、最初から好きになんてなってないし。
と遼は呟いた。


「………それって、喜んでいいのかどうか微妙だね」


急に神妙な顔になった伸に、遼は戸惑う。


「え?…え??ι」


「だって、遼が僕を好きだって言うのは嬉しいけど、僕が意地悪だってのも否定しないんだもん、遼ってば」


淋しげに瞳を伏せた伸に、遼はわたわたと慌てた。


「いや、あの…それはっιそういう意味じゃ……ごめ」


必死に弁解しようとする遼に、伸は堪らず吹き出した。
その目には、すっかり悪戯っぽい光が戻っている。


「伸っ!?ι」


「ごめん、遼。つい……」


くつくつと笑う伸に、遼は膨れてそっぽを向いた。


「ごめんってば、遼」


「知らねえ!伸なんか…」


「僕なんか?……嫌い?」


「う……ι」


再び、伸に上目遣いでじっと見つめられて、遼は拗ねた顔のまま真っ赤になる。


「ずるいぞ、伸……」


「僕は、遼の事大好きだよ」


そう言って、拗ねて引き結ばれた唇にそっとキスをする。
にっこりと微笑むと、真っ赤な顔のまま、今度は遼が上目遣いで伸を睨んだ。


「ほんと、ずるいよな。伸は」


「遼はほんと可愛いよね


「可愛いって歳じゃないだろι」


「僕にとったら、皆まだまだ可愛いけどー?あ。でも一番可愛いのは遼だからね


遼は思わず頭を抱えた。


「……伸。恥ずかしくないかιそういう台詞」


「え〜?全然」


ケロリとした顔で言う伸に、遼は脱力する。


「……伸には叶わないよなー、全く。……でも、オレも大好きだぜ、伸のこと」


はにかんだ笑顔の遼に、伸も照れた様に微笑した。


「……ありがと、遼」


本当に叶わないのは僕の方だけど。
何時だって、遼の笑顔に勝てたためしはないんだから。

心の中で呟いて、伸はもう一度遼に口付けた。


-END-


《あとがき》


これは、当×征小説の「続 34歳 初夏」の伸×遼バージョンってとこですね

当麻や征士の出ない話を書いたのは初めてです(笑)
しかも、こんな意味のない話にやたらと時間かかりました


伸兄さんは、とりあえず誰彼構わず相手をからかわないと気がすまない様ですね(笑)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ