過去拍手御礼部屋

□桜
1ページ/1ページ

夜の闇に、桜の花びらが舞う。

儚くも美しいその光景。


征士は柳生邸の近くの桜の樹の下に佇んで、舞い散る花びらを眺めていた。


月明かりだけだというのに、桜の樹は闇に浮かび上がって見える。

――不思議だ……。

と征士はぼんやりと思う。

まるで、桜自体が光を放っている様で。
手を伸ばして、花びらをその手に受けた。


儚い花。
僅かな間に盛りを迎え、そして散る。

輝きはその生命(いのち)の灯火なのか。
それは、人の生命にも似て―――




「―――征士?」


いきなりかけられた声に、ドキリとする。
声の方を見ると、遼と白炎が立っていた。
不覚にも、その気配に全然気がつかなかった自分に苦笑する。


「……遼。白炎と散歩か?」


「ああ。…征士は?」


「私は―――なんと言うか…花見、だな」


遼が少し首を傾げた。


「花見…?」


苦笑して、征士は桜を見上げる。
遼もつられる様に目線を上げた。


「夜桜……。綺麗だな」


「ああ。儚くて…美しい」


「儚い―――?」


少し驚いた様な遼に、今度は征士が首を傾げた。


「短い間に咲いて散る……。まるで、生き急ぐ様に―――遼は、そうは思わないか?」


「うーん、俺は違う…かな」


遼は桜に近づいて、その幹にそっと手を伸ばした。


「確かに花はすぐに散るけど……春が来たら、また咲くから。樹は…何年も何十年も生きてるだろ?」


征士は菫色の瞳を軽く見開いた。
遼は微笑して征士を振り返る。


「……“儚い”とは、思わないかな」


「―――遼は……凄いな」


ポツリと征士が呟いた。


「えー?なんだよ、それι」


「私は、そんな風には考えられなかった……」


「いや、俺だって、皆に会わなかったら違ってたと思うぞ」


「………私たちに?」


「どんなに時間が経っても変わらないものがある、って思えたから。皆への想い。……皆の想いは、ずっと変わらない。毎年変わらず花を咲かせる桜みたいに、どんなに時が経っても、どんなに離れていても、俺たちは変わらない―――だろう?征士」


笑顔の遼の周りに桜が散る。
それは、征士が先程独りで見ていた光景とは随分違って見えた。


「……ああ。そうだ―――そうだな、遼」


征士は、もう一度桜の樹を見上げた。
儚いだけではない、その姿―――

今までとは違った美しさを感じるその花に、征士は微笑んだ。


-END-



《あとがき》


最近好きなコンビです(*^^*)
なんか、可愛いと思うんですよね、この二人が一緒にいると

で、お互いがお互いに対して、憧れみたいな気持ちを持ってるんではないかなあ…
なんて、勝手に思ってます(笑)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ