Short2

□Make you smile!!
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ナミさんは、おれに悲しそうに悩みを打ち明けてくれた。今日…いや、もう昨日。嵐の時の話だった。


誰も気がつかなかったのが、悪かったのかもしれねぇけど、ナミさんにちっちゃな変化が起こってたんだ。


ナミさんは、昨日の朝から急に天候や風や波が読めなくなってたんだって。いつもは身体で天候を感じ取って知らせてくれて、嵐を回避してくれるけど。昨日は、それがいつもよりずっと遅かった。嵐が見えてから、ようやくすんでの所でかわして。島について。


ナミさんは、下で作業をしてたから嵐が読めなかったって謝ってた。みんなもおれも納得して、いいよ、って言った。不満そうなルフィ以外。


その後、ルフィがナミさんに近づく前に、ナミさんは申し訳なくて、怖くて、女部屋に篭ったんだ。ずっと。夕飯もロビンちゃんが運んだし、彼女以外誰も女部屋には入れてはくれなかった。


ルフィは結局明日は問い詰めるとか言って、拗ねて寝ちまった。おれ達も納得は行かなかったけど、ロビンちゃんが明日までに話を聞き出してくれるって約束してくれたから、その日はそれで済んだんだ。なのに、今日、晩酌に呼ばれて、驚いた。それが、心当たり。


「ロビンには言ったわ…だから、ロビンに、サンジ君に言付けてって…」


「でも、なんで、おれ…」


「サンジ君は、仕事に誇りを持っているし、私の仕事と同じでこの船には欠かせない毎日ある仕事だから、わかってくれると思って。それに、こんな真面目な時は、茶化さずにちゃんと話を聞いてくれるから」


ナミさんは、相変わらず悲しげな顔をして、アクアリウムバーのソファーにもたれていた。おれは、本当はこんなこと思っちゃいけねぇのかもしれねぇけど。
…嬉し、かった。
頼ってもらえたのが、おれで。


「…ナミさん、理由はわかってないんだろ?」


「…えぇ」


冷たい水をナミさんとおれの前に置いて、おれは立ち上がったまま。水を口に含んで。少し酔いを冷まして。


「風や天候が読めなきゃ、航海出来ない?」


「…当たり前でしょ。この島につけたのは本当に偶然。明日には記録溜まるし…」


「じゃあ、読めるようになるまで進まなきゃいい」


「ふざけないで…!」


「ふざけてなんかないよ、ルフィなら絶対そう言う。それはナミさんもわかってるだろ?」


「………」


「あいつは…いや、おれも、みんなもうちの航海士はナミさんだけだ、って言うぜ。ぜっ…」


背中が壁にたたき付けられた。おれの胸倉を掴むナミさんの目には涙が光っている。おれはまっすぐそれを見つめて、ナミさんの言葉を待った。ナミさんが涙ながらはっとなって手を離す。


「ごめん…」


「レディの怒りのはけ口になれるなら本望さ」


おれはナミさんの手を握って笑った。ナミさんの手は、震えてて、涙に滲んでいた。おれは、ナミさんをソファーに座らせて、ナミさんの肩を叩いた。


「……わかってるわよ…!!ルフィなら…ぜったい…ぜったい…!!」


「うん、うん」


「でも…私が航海…できないせいで…船をどめだぐない…っ…!!」


ナミさんは、とっても優しい。だから、珍しく悲しみの涙を流す時には、おれ達やビビちゃん、村人とか、彼女に親しい人間を想って、自分を責めて、涙を零しちまう。


「大丈夫、大丈夫」


おれは、とにかくナミさんを宥めた。ハンカチを出して、渡して。背中を摩って。


「ねぇ、ナミさん」


少しだけ泣き止んだら、おれの話を聞いてくれ。


「今のナミさんの気持ちにそっくりな話をするね」



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