Short3
□New person and old companion.
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まず、な。東の海のレストラン街っていう昔っから有名な島があったんだ。そこには美味ェ料理がいっぱいで、偉大なる航路の料理とかも集まっているって専らの噂だったんだ。あと、どっちかってっと偉大なる航路より、つまり導きの灯台が見える辺りに位置してた。そうそう、ラブーンが居る所とは近いぜ。ははっ、ラブーンが出てくると、お前は相変わらず嬉しそうだな。
とにかくおれは前からクソジジイ…すなわち、うちのレストランのクソオーナーに行きてぇ行きてぇって何回も言ったんだけど、遠いからダメだって何回も止められてた。休暇をとって行ってやろうとしたが、どーもそこまで行ける船がねぇだのなんだのって止められて。レストラン島なのにおかしな話だろ?
で、まぁ、おれは、やっとこさこの島に行ける機会が出来てちっとばかしはしゃいでたわけだ。柄にもねぇだろ?クールなプリンスが。
…なんだよ、その沈黙。聴き入ってた?ウソつくな、明らかに頬骨がひくついてんだよ。
加えて、おれはナミさんに重大な使命を頼まれた。そん時なんか緊張しなかったのかって?レディを前に緊張なんぞしねぇよ。え、慣れてた云々を正直に?…そうだな。
進水式もした後だったし、ナミさんの島とローグタウンで何やかんや行動した後だったからよ。だいぶ、慣れてたかな。多分。
距離…特にねぇかな。自信はねぇけど。
でもまぁ、この島でいろいろあるわけだが、まぁ急かすなよ。話はこれからだ。
ナミさんは麗しい指でベリー札を数枚挟んでおれに突き出しながら、こう言ったんだ。
『サンジ君、あんただけ先に島に上陸して』
そりゃ、おれもびっくりしたし、ルフィもウソップもクソ剣士も驚いたな。そりゃあ、おれが事前に話してた有名レストラン街。みんなみんな楽しみにしてたんだからよ。
『ナ、ナミさん、さすがに君やこいつらに食わせねぇってのは』
『そうだそうだ、サンジだけずりぃぞ!』
『ずりぃぞ!』
『同感だ』
『あんたら、見境無しに食べて偉大なる航路に行く前にお金無くなっていいの?』
そりゃ、もう。的を得ていたというか。おれ、この船に来て最初に驚いたのが食事代だからなぁ。そりゃもう、麗しいナミさんの気持ちはわかったけどさ。
『だから、サンジ君に美味しいとこを聞いて回って選んでもらって、次の日にそこに行けばいいでしょ』
そういうことか、って思った。それなら、他の奴らに食わさねぇってことはなくなるだろうし。
『やだっ!だったらおれが行くっ』
『それじゃ本末転倒でしょうがっ!』
『いくんだぶべっ』
『サンジ君、こんなバカ気にしないで行ってきてくれる?』
『わっかりました!』
ナミさんからベリー札を受け取って、ルフィの帽子を叩いて慰めてやって、不満そうなウソップとクソ剣士を宥めて、おれは船を出ようとした。
そしたら、ルフィにがしっと手を掴まれてよ、
『サンジっ、なんかあっても今日中にちゃんと帰って来い!』
なんで突然んなこと言うんだ、って思った。なんか不吉な予感でも感じとっちまったんだろうな。だから、頭を軽く叩いて、
『わかった』
って約束して返してやってから、島に上陸した、と。
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