Short3

□naps.
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「サンジっ」


キッチンに入った船医の視界に飛び込んだのは、何やらレシピを書いている様子の料理人だった。料理人は少し顔を上げて、船医の方を見る。


「んー、何だ」


「毛布どこだっ?」


「おれの正面の椅子の上。誰か寝たのか?」


「ルフィが釣りの途中に寝ちゃったんだ」


「大物釣るとかあんなにほざいてたのによ。まぁ、毛布は好きに持ってけ」


料理人は小さく欠伸を漏らしながらそう言った。船医はありがと、と頷いて何枚か重なっている毛布をとった。


「…んあ?」


暖かい感触を肩に覚えて、料理人は首を傾げて振り返った。隣の椅子に小さな船医が立ち、料理人に毛布をかぶせようとしている。


「なぁに、やってんだ」


「サンジも眠そうだぞ!ちょっと隈出来てるし…あんまり寝てないんじゃないか?」


「たった二徹だ」


「二徹はたったじゃないぞ!?」


「へいへい」


「聞く気ないだろ!」


むすっとした表情をしても、料理人は軽く流し、手であっちに行けと示すのみ。船医はさらに不満げな表情をした。


「奥の手だっ」


「ぬぉっ」


船医はどかりと料理人の膝に乗った。ぎゅうっとお尻を料理人の膝に押し付けて、服を掴んで離れない。


「…サンジが昼寝するまで離れないぞっ」


「…お前な」


「は・な・れ・な・い・ぞ!」


「…へいへい。ご自由に」


諦めたように長い腕を伸ばし、料理人は船医を腕で挟むようにしてレシピを書きはじめた。


「させるかっ!」


だが船医は諦めず手をばたばた暴れさせたり、料理人は船医の頬を引っ張ったり、帽子で頭突きしたりと何とかやめさせようとする。


「何をう!」


料理人は時々足を出したり手で頬を引っ張ったりと応戦した。もうレシピどころではない、と。







だが、しばらくして。そんな小競り合いを繰り返していたのに、船医の動きが急にぴたりと止まった。料理人の手がきちんとレシピを書く為に動き始める。


「なんだ。無駄な抵抗はやめたのか」


「……ん」


「なら退けよ」


「…うう…ん」


船医の様子に首を傾げて、ちらと下を見遣る。料理人の身体にしがみついて、船医はまどろみはじめている。料理人は呆れた表情を浮かべる。


「止めに来た本人が眠くなってんじゃねぇよ」


「だって…暖かいし…サンジ、甘い匂いする…」


「プリンのカラメルの匂いだろ。さっきまで作ってた」


「………」


「チョッパー?」


返事は無く、ついに寝息が立ちはじめ、料理人は呆れたようになった。隣に座らせようとすれば、蹄でがっしりシャツを掴んで眠っている為、引き離すことも出来ない。


「…ったく」


料理人はぐらつく船医の頭をレシピを書いていた手で支えた。そのまま抱き上げるようにして、彼が寝付くまで待つことにする。


「………」


静かなゆったりとした時間が、キッチンにて経過していった。



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