Short3

□甘色の島の冒険
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「うぉぉぉぉ!!!すっげぇぇぇ!!!!」


その他ゾーンにて。大歓声を上げた狙撃手、船長、そして料理人の三人。町の人達は彼等の様子にくすくすと笑っている。


ビスケットだけで出来上がった木にはピンクに黒に緑のカラフルなマカロンが実り、ジャムクッキーの花が咲いている。また木の根本にはリーフパイとマシュマロで出来た雑草まで。


ベンチ代わりにふわふわのカステラで出来たソファーが飾ってあり、子供達が雑談を交わしながら食べている。


「どういう技術だ、こりゃ…!!」


マカロンを片手で引き寄せながら、料理人は手を震わせる。すげぇすげぇと辺りの菓子を摘みながら、船長も狙撃手も大興奮。だが、狙撃手がおっ、と声を上げた。


「おい、サンジ!あれっ、あれ!」


「な…!!」


狙撃手が指差した先を見て、料理人はあんぐりと口を開けた。マーブルチョコやホワイトチョコでコーティングされた作りかけの家が、一番奥に建っている。


「お、おい!行くぞっ!見に行くぞ!」


「お、お、お、落ち着けよう、サンジ。もうちょっとこの辺見てから行こうぜ!」


「し、し、しかたねぇなァ」


「お、お、お、お、お、おう」


興奮して顔を輝かせながら狙撃手を揺らす料理人を見て、船長がししっと笑う。辺りを見渡し、料理人と狙撃手の襟首を掴んだ。


「あっちうまそうなもん売ってるぞ!いこう!」


「お、おう!」


船長が二人を引く先には、たくさんの屋台や露店があった。彼等を見るやいなや、一気に店主達が押しかける。


「おい、にーちゃん!あまーい揚げクリーム鯛焼きどうだい!」


「フィナンシェが焼きたてだよ!マドレーヌもあるよっ!」


「バナナとチョコが絶妙なクレープはいかがっ!」


「とろっとろのババロアもなめらかプリンもあるよっ!」


「うぉぉ!どれもうまほぉぉ!!」


たくさんの宣伝文句と甘い香りに、船長や狙撃手は目をきらきら輝かせて反応する。突き出された試食品を受け取り、うまいうまいと繰り返していると、料理人はある菓子に目を向けた。



「…なんだこの菓子」


ふわふわのスポンジ菓子の中に、ひんやり冷たいバニラアイスとチョコチップがちりばめられている。おっ、と町の人々が嬉しそうに笑った。


「兄ちゃん、ズコット見るの初めてかい?」


「ズコット?」


「あぁ、最近流行りの菓子なんだ。うまいぞ」


口に入れてみれば、とろりとアイスが舌の上でとろけ、ふんわりスポンジの優しい甘味と混ざり合う。目を大きく見開いた後、気づけば料理人は財布を取り出していた。


「く、くれっ!これっ!え、えっと、9人分!!研究してぇし仲間に食わせてぇ!」


「あいよっ!毎度ありっ!」


「お、おいサンジィ、そんな焦らなくても、荷物多くなるし…」


「う・り・き・れ・た・ら・ど・う…」


「わわわわわかりました。だ、だ、だ、だから落ち着け!」


料理人が興奮し、狙撃手が必死に宥める。船長はひょいひょいと試食品を摘みながら、そちらを見て笑い、店員達も笑った。


「はははっ、荷物のことは心配しなくていいよ!後で船に送っとくから」


「ほ、ほんとか!ありがとな!じゃあ、後は…」


「サ、サンジ!おれババロア!」


「ぶべんぶ、ぶめぇ!ぶべんぶ!(全部うめぇ!全部!)」


「あー!!試食が空に!」


「てめぇ食い過ぎだァ!!」


騒がしくなった、でも楽しそうな市場。お菓子の家の影から誰かが見つめる。


その誰かはふっと笑い、姿をくらました。
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