Short3

□Hand match with sword.
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「お前、二刀か」


「まぁな」


刃を二つ光らせ眺めながら、料理人が言う。時々落ち着かなそうに手の平を見て、また刀に視線を落とす。剣士はその様子をじっと見て、


「手に怪我させやしねぇから本気でこい、アホ」


「アホは余計だ」


料理人は静かな瞳を剣士に向ける。剣士はいつものように三本刀を構えていた。周りの観客がごくりと息を呑んで、ひそひそ話を始めた。いつも喧嘩ばかりの二人が、と言うように。


「なんでこんなに真剣なのよ」


「女はわからねぇだろうなぁ。男の修業だぜ」


「見た目ただちゃんばら刀持っているだけじゃないかしら」


「わかってねぇなぁ、ロビン。ちゃんばら刀でも真剣なんだ。ゾロを鍛える為にやるんだからな」


「あー、そうだっ」


「そうなのか!?」


「しっ、始まりますよっ」


音楽家が他を黙らせた瞬間料理人が前に飛び出した。剣士が突き出してきた刀を一刀でいなし、二刀目を加えようとする。だが、防がれた。剣士が左手でカウンター。それを料理人がバックステップでかわす。剣士は不敵に微笑んだ。


「…へぇ」


「文句は受け付けねぇぞ」


「悪くねぇ太刀筋だ」


料理人の腕前を見て気合いが入ったのか。剣士が刀を握る手に力を込める。それを吐き出すように飛び出した。料理人は舌打ちし、それを二刀を十字にして押さえる。


刃が揺れた。二つ同士、刀を合わせたまま、瞳を合わせる。均衡が長引きそうだと踏んで、彼等は一度離れた。周りの一味も息をつく。料理人は額の汗を拭った。


「生意気マリモを蹴飛ばしてぇんだが?」


「うるせぇ。足は禁止だ、アホコック」


「サンジやるなー!すげーなー!」


「お前ら釣りしてろ…っと!」


剣士の突進に刀で咄嗟に応じた。豪剣、勢いで押して来る。色々なパターンを試しているのだろう。宙返りしてかわし、剣士の頭を飛び越えた。着地と同時に刀が突き付けられる。


「…ちっ」


「降参か?コック」


「刀は唯一の取り柄。おれァ足禁止だぜ。わざと負けてやったんだ」


「そういうことにしといてやるよ」


「あァ!?」


料理人が足を出した。脛にぶつかり、剣士が思わず痛みに跳ねる。


「なにすんだてめぇ!」


「隙だらけだぜ、マリモ君」


「てめぇ…!」


「やるか!?」


ぎゃーぎゃーといつものように喧嘩を始めた二人。他の一味は先程までの手合わせに圧倒されていた。だが、船長だけはしししと笑い、唖然とした狙撃手が釣竿を海へ取り落とすのを眺めていた。



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