Short3

□Hand match with sword.
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短時間の休憩を入れることになり、料理人はおやつついでに瓦煎餅と緑茶を入れてきた。普通の煎餅より少し固めの、でも、かじりやすく柔らかくした甘いそれをかじりながら、甲板で会話をかわす。


他の一味は興味深かったと口々に言いながら、煎餅と緑茶を食べ終わってそれぞれの部屋に戻った。甲板には料理人と剣士、そして釣りをしていた船長、狙撃手、船医の五人が残っていた。


「サンジさ、なんでそんなに刀使うのうまいんだ?おれびっくりだ」


船医が瓦煎餅をかじりながらきらきらと瞳を輝かせる。料理人は緑茶を口に含んでから、


「修業ん時、蹴りと一緒に腕も鍛えた。腕の力なきゃ、鮪包丁とか扱えねぇし、戦闘ん時に困るしな。だから、腕を鍛える為に基本だけだが、刀修業もやった」


「おっさんが教えてくれたのか?」


「まァな。地獄だったが。毎日身体が痛かった。蹴られまくられて」


瓦煎餅にかじりつきながら身震いする。修業はそんなもんだ、と船長が笑った。一方、剣士は緑茶を飲みながら、


「お前の店に、刀を使って戦うのはいるのか」


「居たさ。でもあんま強くねぇよ。口だけだ」


お茶を飲み、一息つく。そして、横に置いたゴムの刀を突いて、剣士の方を見る。


「お前も師匠が居たんだろ」


「居た」


「お、ゾロの修業時代の話あんま聞いたことなかったな」


「どんな師匠だったんだ?」


狙撃手と船医が興味津々で問えば、剣士は瓦煎餅を飲み込んで、


「主に基本の型と、極意を教えてくれたのが師匠だった。応用や修業は、自分で追加した」


「うん」


船長が楽しげに続きを促す。剣士はふっと笑って、


「鉄が斬れるようになったのは、師匠…いや、先生のお陰だ」


「おぉぉ!」


剣士の静かな、でも少し嬉しそうな口調と顔に、船医が顔をきらきらと羨ましげに輝かせた。船長と狙撃手は顔を見合わせて笑う。


「サンジもゾロも全然目的が違うのにな、似たようなことを師匠に教えてもらってんだなぁ」


「おんもしれぇ、しししっ」


彼等の笑い声を聞いて、料理人も口元を緩ませたが、こう言葉を続けた。


「でも、やっぱ、足の方が向いてんな、おれは」


「へ、へたくそじゃねぇぞ、ぜんぜん」


「そういう意味じゃねぇよ」


ぴん、と勘違いした狙撃手の鼻を弾いて、


「おれの手に一番合う刃物は、包丁だってこった」


からっぽになった煎餅と緑茶のお皿。それを笑顔でさらいながら、料理人はキッチンへと歩く。ここで、剣士がゴムの刀を持って立ち上がった。料理人が瞬きする。船長達は彼等の様子を首を傾けながら見ていた。


「まだやるかい、マリモ」


「いや、今日は終わりだ」


料理人の方にゴムの刀を投げる。料理人は皿を頭に乗せ、片手でそれを受け取った。危ない、とがなる暇なく剣士が言う。


「また、付き合え」


「あァ?」


「お前の修業にも、なるんだろ」


剣士は静かに背中を向けて歩きはじめた。お前が修業してぇだけ、という言葉を飲み込み、料理人はそれを壁に立てかけ笑う。


剣士はゴムの刀を掴み、ゆっくりとマストを登る。カモメが彼の横を嬉しげに鳴きながら通り過ぎた。


「うるせぇ修業相手が出来た」


甲高いカモメに掻き消されなかった、小さな独り言を耳にした甲板の船長達は、嬉しそうに笑った。


その日から一、二週間に一回は、甲板の上で揺れる金髪と緑髪が見られたそうな。


<END>


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