Short2
□result of depending
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ある冬島の市場で震えながら買い物してたら、海軍兵にナンパされている女の子を見つけた。
海軍の中佐かなんか知らねぇが、女の子、すげぇ嫌がってたし、部下の奴が麦わらの一味現れたから行きましょうって何度も言ってたから、なりふり構わず顔から蹴飛ばしたんだ。
「お、お前何するんだ!」
中佐が頬を摩って怒る。女の子は慌てて逃げて行った。いいぞ、いいぞ、って周りから声が飛ぶ。
「レディに手ェ上げてんじゃねぇよ」
「そ、そうだっ!」
たまたま一緒にウソップも背中で叫んでたのは置いといて。そんで中佐とかいう奴をのしてやったんだ、簡単に。そんで逃げ始めた。
……ここまでは、よかったんだ。
しつこいくらい海兵達が追ってくるから、二手に分かれようってことになった。で、ウソップがびくびくしながら二手に分かれたはいいんだけど、おれの方ばっか追ってくる。しつけぇくらい。
それでも蹴飛ばして減らしながら進んでたら、運の悪いことに行き止まり。有刺鉄線がびっしりあって封鎖してあったんだ。
「もう逃げられんぞ」
なんか出てきた奴がカッコつける。どうやら、こいつが海軍の大佐らしい。ちら、と背中を見れば、サニー号が見えた。家や大量の鉄線が邪魔して、近くには付けれねぇだろうな。
「サンジっ!!」
船長が血相変えて叫んだ。ウソップも涙ながら乗っている。目の前のやったらいる海軍。船の海兵がほぼいるような。おれは無意識のうちに囮になってたみてぇだ。
「バカ野郎!!今のうちに逃げろ!」
「出来るか!バカ野郎!」
聞き分けねぇ船長は相変わらずだ。そう舌打ちして、叫んだんだ。
「じゃあどうしろっ……!!」
嫌な、音がした。腹になんか刺さった。触れば鋭い銛が刺さっていた。バズーカから煙が上がってた。
「……っ…!!」
「サンジっ!!」
「避ければ有刺鉄線を突き破り船に突き刺さるぞ」
膝をつきたいのを我慢した。
銛を腹から引き抜く。血が滲んでも、気にしない。ちら、と後ろみたら、ルフィが焦った顔でこっちを見ていた。
「ルフィ…」
「今助け…」
「くんなって…」
「嫌だ!」
なんて、強情なやつ。
「…じゃあ…後で…来い」
有刺鉄線の壁は、分厚い上に高くて複雑だ。あいつにゃ、痛ェし、絡まっちまう。剣士は斬れるだろうが、フランキーは吹き飛ばせるだろうが、おれを巻き込むことを懸念しそうだ。
「でも…!」
喋ってる間に2本目のぐさり。今度は右足。急所をわざと外してるんだろう。参った、これじゃ蹴れねぇや。
「…頼む…ルフィ…今は…逃げろ…」
首を回して言った途端、左手で胸倉を掴まれた。そのまま首に右手を掴まれて、有刺鉄線の海にダイブ。背中に刺が突き刺さっていくのと一緒に、首を絞められる。
「……!」
首を掴む手を、なんとか手ではねのけようとする。でも別の海兵が命令を受けて、俺の手は押さえられちまった。背中が痛む。息が出来なくなっていく。痛みと息苦しさで意識が飛んでく。
――た、大佐、一般市民にな、なにもそこまで…!!
おれ、ばれてねぇのかよ。一般市民って。
――中佐の行為を見られ、かつ、海賊と知り合いだ。口を滑らされたら我らの海軍支部に傷がつく。
首がさらにめきりと鳴った。息が吸えねぇ、吐けねぇ…チクショウ…!!
掠れる声と視線の前でクソ大佐が意地悪く笑った。身体に力が入らねぇ…。
――お前らァ!!それ以上やったらぶっ飛ばすぞォ!!
ひっくり返った船長の声で、奴は首に込める少し力を緩めた。代わりに有刺鉄線におれを埋めた。思いっきり塞いた。背中が首が痛みと血に塗れて気持ち悪い。
――サンジィ!!
――こいつを見逃して欲しければ、海軍船に全員来い。
――何ィ!!
――来なければ、こいつを殺す。
人質に、されちまったようだ。
呼吸が、変だ。ひゅーひゅー言ってる。見れば、必死な顔と、ぼやけた頭に響く、あいつの叫ぶ声。
――サンジっ!!
目が勝手に閉じた。身体の力が一気に抜ける。何もかも真っ暗になっていく。あいつの声が焦ってく。
――ぜってぇ助けに行くから、待ってろ!!
唯一の光が、それだった。
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