Short2

□いつもが幸せ
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カラスかカモメか。カーカークークーと夕日の中に鳥が舞う夕暮れ時。船員達は相変わらず思い思いの行動をとっている。


まず、船長と狙撃手。彼等には決まって向かう場所が一つある。それは、遊び疲れた食いしん坊でちょっぴり甘えん坊の子供達が、必ず行く場所。


「サンジィー!!メシー!!」


そう、キッチンに。
もちろん、居るのは彼等の母親ではなく料理人。夕飯作りに勤しむ一流の料理人は彼等の相手を忘れない。足音を聞き付けた彼はちら、と一瞬視線をそちらに向ける。


「手は?」


「洗った!!」


「…そこは合格だな」


青のシャツに黒のエプロンを纏い、鍋を掻き混ぜている料理人の背。船長はその広い背中に時々ぎゅっとしがみつく癖がある。その度いつも「重い」と料理人に呆れられ蹴られるが、船長は止めずまた飛び付いてしがみつき、たいていそれで料理人は諦めてしまう。


また、狙撃手はほぼ一日中働き者な料理人を少しでも手伝おうと、お揃い、でもちょっとだけ小さな、料理人からため息混じりに貰ったエプロンを付けて、彼の隣に立って仕事を探したりもらったり。時々料理人と同じように船長にしがみつかれるが、そこは慣れっこだ。


となれば、寂しがりやの船医は、こっそり医療室から書類を持ち出し、料理人に出してもらったミルクを飲みながら仕事をするのである。ちらちらと調理をドキドキしながら覗いているのはご愛顧である。


一方外から響くBGMは、三人と遊び終わった食いしん坊な音楽家が夕食を待ち切れないようにバイオリンで奏でる軽快なワルツ。


ただ、あまりの軽快さにひっそりと作業中の船大工が彼の発明室で踊り、時々迷い込む剣士を巻き込んでしまう。一緒に踊るのはもちろんお断りな剣士は、ダンベルを上下しつつ彼の部屋に居座る。


また、BGMは、調理や書き物だけではなく、航海士と考古学者二人コーヒーを飲みつつの談笑をよく弾ませる。ガールズトークは一度始まればなかなか止むまい。楽しげな二人の笑い声を基準にしつつ、音楽家は曲調をさまざまなものに変えていく。


ばらばらのことをしているようで、綺麗にまとまっている、この船。夕焼けが沈む中、船主の太陽がにこにこと笑っていた。



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