Short2

□Short系まとめ
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「今日は宴にしていいか?」

キッチンに立ち寄り、小腹を満たすためのチョコレートを口にした船長は、きょとんとした。頬をかりかりかきながらの料理人の不意の提案。思わずぐっと顔を近づける。

「いーけど、なんのだ?」

「まぁ、おれの提案じゃねぇんだが」

料理人はひそひそと船長の耳に小声で吹き込んだ。彼の顔がパァっと輝く。

「えっ!!!むぐ」

「サプライズ宴だ、静かにしろ」

興奮して大声を出しそうになった船長の口を手できゅっと塞ぐ。料理人が小首を傾げて確認する。こくこくこくと船長は口を塞がれたまま頷いた。料理人は手を放した。

「みんな知ってんのか?」

「あぁ、サプライズ受ける側以外みんなな」

「それ最高だな!よぉし、乾杯はおれがするぞ!何時からだ!」

「19時ちょうどだな……いい具合に大皿グラタンや骨つき肉が焼けるのは」

ふつふつ、じうじうと音を立てるオーブン。ただよってくる、美味しい匂い。船長はごくんと唾液を飲んだ。ぱくり、と残りのチョコのかけらを口に放り込んで。

「よぉし!!手伝ってくる」

「ターゲットはロビンちゃんと一緒にいるからな、くれぐれもバレるなよ」

「わかってる!」

船長は気合を入れて他の一味のところに駆けていく。今頃、狙撃手は花火の準備を。剣士と船大工は会場の設営を。航海士と音楽家はライブの打ち合わせをしているはずだ。そして、祝われる側は、考古学者と一緒にいて、何も知らずに絵本を読んでもらっている頃だろう。料理人は小さくぷはりと笑って、冷蔵庫を開けた。

「こっちがメインなんだけどな」

半開きの扉の中。ふわふわしっとりのスポンジにたっぷりのクリームといちごをあしらった、あまーいケーキ。大きなチョコレートプレートに書いてある文字は、他人から見れば取るに足らないことかもしれないし、何をいまさらと思うことかもしれない。けれど、一味にとっては宴で騒ぐくらい大事なことだった。

『チョッパーが初めて薬草を一人で買ってこれた記念』

人見知りの仲間が、大喜びで興奮して帰って来るくらい嬉しいことなら。彼らも嬉しいし全力で祝うのだ。

「しーっ、チョッパーには内緒だぜ」

誰もいないのにそんなことをヒソヒソ声で呻く自分は浮かれているのかもしれない。料理人はふ、とわらって、ゆっくりと半開きの冷蔵庫を閉じた。
楽しい宴まで、あと30分。

――仲間の最高の、記念日にっ!!

――かんぱーい!!

――ありがとう、みんなっ!!

12周年ありがとうございます!!!
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