Short2

□Short系まとめ
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「つかれたなぁぁ、サンジ」

「そりゃそんだけリュックパンパンにすりゃあな。だから持って帰ってもらえ、って言ったのに」

「だってぇ、おれだってゾロみたいに鍛えたいんだ……」

「だったらサニーに帰ってあの筋肉ダルマに勝手に死ぬほどレッスンしてもらえ。おれはしらん」

船医がベロンと舌を出して疲れた顔をすると、料理人は呆れた。船医の背中のリュックは薬草やら本やらでパンパン。人獣型でぎりぎり運べるくらいに膨れ上がっているのだ。料理人は買い物の品を全て船まで運んでもらっているから、手ぶらですんでいるのだが。

「さてと、そろそろ昼飯にするかな」

「そうか、食べて帰るんだ!」

船医はリュックの重さを一瞬忘れて顔を輝かせた。この島は飲食店街があり、色々な屋台やレストランがずらりと集まっている。

「お前、何が食いてぇ?」

「サンジは何が食べたいんだ?いっつもおればっか聞いてもらってるぞ!」

船医は慌てたようにいった。いつも料理人との買い出しでなにか食べたり買い食いしたりするときはいつも船医の希望ばかり聞いてもらえるから。甘いチョコバナナクレープだとか、ふわふわハンバーグだとか。だから、たまには料理人のお願いも聞いてみたくなったのだ。

「おれ?いいのか?」

「うん!おれお腹すいてるからなんでも食べるぞ!」

「そうか?じゃあ、どっちかっていうと麺だな」

「メンかぁ」

船医はキョロキョロと辺りを見渡した。麺の店というと、やはり飲食店らしく色々あって。パスタにうどんに、どこにしようか。よく効く青っ鼻を繰り返しひくつかせてみる。ひくひく、ひくひく。すると、くるんと目を丸くした。

「あっ」

「あそこか」

蹄で指された方向。料理人はニィと笑った。赤いのれんに、ガラス扉の趣。店頭に踊る文字は『ラーメン』の四文字。並んでいる客がするりするりと入っていった。

「確かに、あそこは美味そうだな。入るか?」

「うんっ!!サンジのお墨付きなら大丈夫だなっ!!」

船医は同じく味や香りに鼻が利く料理人に背中を押してもらって、その店に入ることにしたのだった。

ーーーーー

「む、むむむ」

「まだ悩んでんのか?」

メニューを見つめ、唸ってしまった船医。料理人は呆れたように息をついた。ここのラーメンのメインは味噌。ただ、味噌ラーメンにも色々あるのだ。口がしびれるほど辛く、でも旨味の濃いと書かれてある辛味噌ラーメン、たくさんのビタミンがとれる野菜炒め味噌ラーメン、海老の旨味もつめた海老味噌ラーメン、もちろん普通の王道勝負味噌ラーメンもある。他にも再度メニュー、ジューシーなから揚げ、肉汁たっぷりの餃子、ほかほかの白ご飯やパラパラのチャーハン……。ひたすらに船医を悩ませる美味しそうなものばかりだ。

「少しは絞れてんのか?おれは……」

野菜味噌ラーメンにしようかな、と呟こうとした料理人。辛党だし辛味噌ラーメンも気になるが、コックとしてバランスよく野菜を、と思ったからだ。

「ヴン。おで、辛味噌ラーメンに挑戦してみたいんだ」

「は?」

だが、頭を抱えながらの船医の一言に顔を歪めた。船医は、辛いものが苦手である。だから、隣の客が汗をかきながらひーひー啜っている、辛味噌ラーメンを食べきれるわけがないのだ。

「でも、食べきれなかったら勿体ないだろっ?だから、野菜炒め味噌ラーメンでも悩んでるんだ。でも、辛いものを挑戦しないなんて男が廃るってウソップがいってたし。あと、餃子も美味しそうだけどから揚げも食べたいし……」

彼はでもを繰り返してうんうん悩んでいた。狙撃手はあとで締めよう。そう考えたあと、料理人はちらとメニューをもう一度見返す。そして、にやと笑った。

「ダメだ、チョッパー」

「え?」

「ほら、見てみろここ。辛味噌ラーメンは一会計にひとつまでって書いてあるだろ。おれが辛味噌ラーメン頼もうとしたからお前はダメだ」

「あっ」

船医はかちんと固まった。料理人の言う通りだ。辛味噌ラーメンは、一会計にひとつまでとはっきり書いてある。

「でもまぁ、お前が野菜味噌を分けてくれるってなら、おれも辛味噌ラーメンを分けてやってもいいぜ」

「お、おお!」

船医はキラキラと顔を輝かせた。そうしたらウィンウィン。自分は辛味噌にも挑戦できるし、食べられなくても料理人が食べてくれるから問題ない。野菜炒め味噌も美味しく食べられるし、料理人にも分けてあげられるのだ。

「そうするっ!!」

「じゃ、おれは辛味噌に、餃子と白ご飯な」

「お、おれ!野菜炒め味噌にから揚げにチャーハンにするぞ!」

「じゃあから揚げと餃子、チャーハンと白ご飯も交換するか」

「うんっ!!」

彼らはお互い満足そうに注文を終えた。店員が奥に引っ込んでいくのを見ながら、船医は料理人を誇らしく思った。結局頭を回して、船医の希望通りに導いてくれたのだ。

「ん、どした」

「サンジは優しくて頭いいなぁって」

「……どんだけ誉めても餃子は交換だぜ」

「わ、わかってるぞ!」

船医が慌てたように言うと、料理人はくつくつと上機嫌に笑った。のんびり和やかに待っているうちに、注文通りの品が彼らの元に訪れる。真っ赤なスープでも鶏ガラの香りが堪らない辛味噌ラーメンと、たっぷりしゃきしゃき野菜が芳しい野菜炒めラーメン。そしてまだしゅわしゅわ衣が鳴っている揚げたてから揚げに、噛れば肉汁溢れるだろうジューシー餃子。そしてほかほか白ご飯とチャーハンが。

「ひーー!!!!!おいじいげど、がらい!!がらいぞーーー!!!」

「辛味噌頼まなくてよかったな、お前。ほら、水。野菜炒め味噌は辛くねぇからな」

そして、いただきますのあとは彼らの想定通り。挑戦は最初にと真っ赤な美味しいスープがたっぷり絡んだ中太麺を勢いよく頬袋ぱんぱんに啜った船医が火を吹く形相で喚き出し。シェアされたしゃきしゃき野菜炒めとつるつるの旨味たっぷりの麺を味わっていた料理人が水を呆れ混じりに差し出したのは言うまでもない。

<end>
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