Short2
□Short系まとめ
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「お年玉!!」
「ナミ!お年玉!!」
「今年も」
「おとしだまーー!!」
「わかってるわよ」
弾んだ声がする。今日は正月。料理人が作ってくれた美味しいおせちやみんなでついたお餅をつまみながら、賑やかに過ごす日だ。そして、彼らが楽しみにしているイベントのひとつに、お年玉がある。航海士が一年間のお宝の一部をためておいて、それを換金して同じ額配布するのだ。金額はお宝の量によって変わるから、彼らはちょっとしたくじ気分。ワクワクしながら、ポチ袋を開ける。
「おーーっ!!5000ベリーもはいってる!!」
「今年はお宝たくさん集まったからね。奮発したわよ。私は貯金するけど、大事に使いなさい」
「やったーー!おれ、ほしい本買うんだー!」
船医は嬉しそうにそれをリュックにしまう。狙撃手も自分のお財布にそれを仕舞いながらふむ、と考える。
「チョッパーは本か。おれは何買おうかな。なぁ、お前らは何買うんだ?」
「酒」
「肉!」
「アーー、君たちは予想がついてるので他の人でオネガイシマス」
「失敬だぞウソップ!!」
「失敬だ」
「ゾロクンハナツネルノヤベデ」
剣士と船長のいつも通りの答えに呆れぎゃーぎゃー騒ぎながら、狙撃手は他の一味を見た。料理人はぱくりと煙草を咥えながら、
「おれは新世界版女の子の映像電伝虫集を買う」
「真面目な顔で言うな!!」
「アッ、サンジさんぜひともかしてください!私は偉大なる航路版を買いますので!」
「あーら、五千ベリーで私の売ってあげるわよ」
「かいますなみさん!!」
「カイマス!!」
「えー、と、フランキーとロビンは?」
相変わらずのエロコンビ。まともな買い物をする者はいないのか。狙撃手はちらと船大工と考古学者を見た。
「おれぁ、日用品の福袋を買おうと思ってなぁ」
「あら、私もよ」
「えっ」
意外な答えに一味の注目が一気に集まる。
「せっかくだからみんなで楽しめるもん買おうと思ってなぁ」
「私もお金はあるから、みんなで楽しめるものを買いたいわ。フランキー、どうせなら私のと足して一万ベリーのを買わない?」
「アウ、そりゃいい考えだロビン。そっちのがいいもん入ってるだろ」
からから笑う船大工と考古学者の二人。一味はがん、と雷が落ちたような顔をした。
「お、おれたちはなんて」
「こどもだったんだ」
「最年長の私が」
「いいやつすぎるだろぉおまえら!!」
ばんばんと床を叩く料理人、船長、音楽家、狙撃手の四人。航海士はにっこりと笑って立ち上がった。
「じゃあ、それぞれお年玉をもってみんなでほしいものを買い出しにいきましょ」
「ロビン!フランキー!おれ肉買うけどそっちも買うぞ!もっといいやつかおう!」
「おれもー!本買うけどそっちにも出すぞ!」
「仕方ねぇ、酒のついでに出してやる」
「おれさまもカンパするぞ!買うもん思い浮かばないしな!!」
「もちろんおれもロビンちゃんにだすぞ!」
「あら、サンジはいいわよ。みんなに海王類ほどある荒巻鮭と骨付き高級生ハムをお年玉で買うんでしょう?エッチな本以外に。注文書見たわよ」
「なにーー!!」
「ロビンちゃんいや、それはその……」
一味口々に船大工と考古学者を手伝うと喚く中にさらりと秘密を入れられて、料理人は慌てたように人差し指をたてた。
「ブルック、おめぇもみんなが使う宴のカスタネットお年玉で買うんだろ。エロ本以外によぉ」
「あ、はい。皆さんのことが大好きですから」
「そこは否定しねぇのかよ!!」
「おれも好きだぞブルックーー!!」
「おれもーー!!」
音楽家はさらっと秘密を認めたが、にっこりと骨を緩ませて航海士のほうを見た。
「そんなこと言うなら、ナミさんも貯金っていいながらみんなのためにカードゲーム代を出してあげるっていってたの私この耳で聞きましたよ!!耳ないですけど」
「ちょっとブルック」
「アッ、耳つねるのやべで。耳ないのに痛いです」
「チョッパーもみんなのたい焼き買おうっていってたよな?」
「サンジ!なんでばらすんだ!?ひどいぞ!それだったらゾロだってヤキトリを」
「あぁ!?」
「やーいばれてやがるヤキトリマリモ」
「んだと荒巻コック!!」
次から次へと仲間のためへの秘密が発覚してぎゃーぎゃーと賑やかな新年初めてのお出掛けになった一味。船長は機嫌よくししっと笑って、ぐんと手を伸ばす。
「ん?」
「どうした船長」
急にみんなまとめて長い腕で抱き込んで、ぎゅーっと抱き締めたものだから、料理人と剣士は呆れたようにあえて問い返す。意図が、わかったから。船長の満面の笑みで。もちろん、仲間たちも意図をつかんでいた。
「今年も、よろしくな!!」
改めて挨拶した船長に、
「おうっ」
仲間たちはいつものように大きな声で返事をする。一味の新年の始まりの買い出しは、相変わらず楽しく賑やかに始まるのだった。
<Happy New Year>