Short2

□God comperes recentry with old.
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――ハングルアグナという海流を、ご存じだろうか。ハングルアグナは、数年前に発生した原因不明の海流で、突然霧が立ち込めたり、波が荒れたりなどを繰り返す海流だ。しかし、それだけではない。ハングルアグナは、そこを通る船乗り達を空腹にしてしまうという。どれだけ食料を積んでも、いつの間にか、毎日少しずつ消えている。決して船員達のつまみ食いや、コックの分配ミスというわけではない。原因も、まったくわかっていない。


やがて、食料が尽きかけた頃、人々は奥の奥の無人島、神木がある無人島へと着くのである。そこの記憶はたった一日、探せば山菜も茸もそこらじゅうに生えている。しかし、空腹に満ちた荒んだ者共は……


ひらり、と裂けた古い新聞が風に舞う。島の中心にある太い高い高いいっそうと葉が生い茂る木に、それは絡まる。ふん、と枝を揺らして、枝に絡まった新聞を飛ばすそれが、新聞に書かれていた神木だった。
太い枝にはいくつか傷がつき、葉には赤々としたさくらんぼほどの実がついていた。


木が神木と呼ばれ始めたのはいつからだったか知れない。しかし、この木には不思議な力が備わっていた。


木は、人のように手を伸ばす代わりに、自分の意志を持ち、枝や根を伸ばし、葉を飛ばすことができる。樹液を吐き出すことも出来る。また、意志がある為、人間の話している言葉や感情がわかる。


木はその辺りが神の木と呼ばれる所以だと考えていた。


木は、人間達が食べることの出来る植物達を守っていた。理由は木は最近の人間達を好まなくなっていたからだ。


昔の人間は、一定の量しか取らずまた生え変わり増やす機会を与えてくれた。木を乱暴に切り刻んだりしなかった。しかも仲間に優しく、思いやりもあった。木が人間達が来てその様子や感情を見るのを待ち焦がれていた時代も、そのときだった。
人間達が笑えば、木は幹に温かさを覚えいい気分になった。


しかし、ハングルアグナが発生するようになってから、全ては変わってしまった。ここに来る人間達は空腹で荒み、山菜や茸を好き勝手大量に引きちぎっては仲間同士で醜い奪い合いを始め、木々を倒していく、乱暴な者達ばかりとなった。何本も仲間を再生出来ないまでに折られ、草を蹴り荒らし終いには燃やされた。


木はいつしか人間を憎むようになり、殺すようになってきていた。先程の新聞の続きとなる部分に、その方法が書いてあるようだ。しかし、最近の人間達に知れては困る、確実に殺す為に。木はそう思い引きちぎって風に飛ばした。



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