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□サラダ化大騒ぎ
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「……」

「サンジー。どうした、元気ねぇなー」

「体調でも悪いのかー?」

船長と狙撃手が料理人を囲む。朝起きてすぐ料理人の調子が悪かった。彼らを見てびくりと怯えたし、剣士がおやつを勝手に持ち出しても気づかなかったし、航海士に曖昧な笑みをこぼすことが多かった。

「最悪な夢を見たんだが、聞いてくれるか」

料理人は深刻そうな顔でそう言った。狙撃手と船長はごくんと息を飲んで頷く。

「もう二度とみたくねぇ、ゆめだ」

ーーー

朝起きたら、おれは妙な違和感に気づいたんだ。あ、夢の中で起きるっていう意味不明な感覚とは別な。でその感覚ってのは胸の辺りが重たかったんだ。簡単に言えば。で、なんだろうなーと思って柔らかいそれを触りながら鏡を見たら、目飛び出したわけだ。背や体がどこか縮んだおれの胸に、立派な柔らかいバストがついてるって。

「ぎゃぁぁぁぁ!!」

おれは、叫んだ。いつもより甲高い声だったな。なんか。他にも慌てながらあるかないかいろいろさわっちまって確認したけど。いろいろは聞くな。とりあえずわかっちまったんだ。愛すべきレディに、おれがなっちまったんだって。

「なんだよ、うるせぇクソコック」

「もーあさか?」

そしたら、起きるじゃねぇか、お前らとか。そしたら、思わず瞬きしちまうし。

「なんだこりゃ、飾りかーー」

「ああああ!!!」

思わず、さわいじまうじゃねぇか。マリモがマリモのこれまたでかい胸を、がしっと鷲掴みにしてるし。なんか、自分でちぎれんばかりにぐーっと引っ張ってるし。なんだよこのクソアホ変な実験大会は。

「バカ野郎!!そういうことはするもんじゃねぇ!!はったおすぞ!!!」

「何顔赤くしてんだお前!!」

「なんかおれもへんだぞ!!なんかついてるし、ほらー」

ルフィはなんか脱いで小さめの胸ぷらぷら手のひらで揺らし始めるし。こいつらどこまでガキなんだ。

「バカ!!!脱ぐな!!バカ!そういう下品なことはすんな!!ちゃんと着てろ!!!ふく!!!」

「ええ……」

「言うこと聞かねぇとメシ抜きだ!!アホ!」

「それはこまる!!」

おれはもう叫ぶだけ叫んで、あいつらに服を着せた。っていっても、いろいろ落っこちちまったし、ついてるもんもあるからいつもの服がなんか落ち着かなかった。もちろん手伝って着せる側も落ち着かなかったがな。

「なんか筋肉が減った。鍛え直しだな」

「おれいつも通り伸びるぞー!」

こいつらなんで変わらねぇのかって、最初は張り倒してやりたくなったなおれは。大問題じゃねぇかいろいろ。でもレディは傷つけるもんじゃねぇしでもこいつら元は野郎だし、頭の中でいろいろぐるぐるしてたな。とにかく。

「お、お、おれたち、女になっちまってるる……」

ちなみに一番夢の中でまともな反応をすんのはウソップ、お前だけだった。バスト揺らしたりもしねーし、慌てて服もちゃんとすぐ着替えるし、ちゃんと驚いてよぉ。特別に紅茶サービスしてやるよ。お前はダメだ。一番手やかせやがって。

「……トリアエズ、ナミサンニゴホウコクニ」

「何壊れてんだ、ただ女になっただけだろ」

「うるせーー!!!」

「いや、ゾロ、ただじゃねぇぞ。そりゃだいぶおおごとだぞー」

マリモがまだぶつくさ言いやがるから二人でわめいて、おれたちはナミさんのところにいくことにしたんだ。そしたら、

「きゃーー!!」

ナミさんにしては、野太い叫び声が。おれたちは顔を見合わせちまった。まさか、とか嫌な予感がしておれたちは女部屋に入ったんだ。そしたら、

「……私」

そこには信じられない光景があった。ナミさんの立派なバストは胸筋に変わり、体はどこかがっしりしていて、キュートな目付きがなんかきつくなってて。

「男に、なっちゃった」

「ウワァァァァァァァ!!!!」

「あ、サンジが……」

もうそれ以上は見てられなくて、おれはそこで気失っちまってよ。

ーーー

「そういう夢だ」

「そりゃ地獄みてぇだな」

料理人のげっそりとした顔に、狙撃手がうんうんと特別サービスの紅茶をすすりながら繰り返し頷く。

「そうか?おもしろそ」

「人の悪夢を面白そうで片付けんな」

船長に即座に蹴りを入れて、料理人はむすりとする。

「まぁ、でも夢だからよ、そういうことはきっと現実にはねぇからさ。落ち着けよ、サンジ」

「は、はは、そうだよな」

料理人は紅茶をのみながら空笑いしたが、

「キャーー!!」

航海士の悲鳴が外から響き、彼らは顔を見合わせる。

「どうしたナミさん!」

「敵か!?」

航海士は震えながら甲板にいた。怯えふるふると一ヶ所を指差しながら、困惑した声を出した。

「ゾ、ゾ、ゾ、ゾロが……」

駆け付けた彼らは、その剣士を見て唖然呆然とした。眠ったままの剣士の胸はどこかふくよかになっていて、腕も体も縮み、瞳はぱっちりとしている。そして、彼らは足元に転がる半分だけ平らげられたビスケットに目がいった。

「ウワァァァァァァァ!!!」

「あー!!サンジ、しっかりしろー!」

料理人が、そのパッケージを見て、泡を吹いて倒れ狙撃手と船長が慌てて支える。そのパッケージには、

『ホルホルビスケット・一個食べたら一日性別が逆になります。ヴァターシ特製。東の海への輸入品』

とかかれてあったという。
そして、一日女の子になった剣士はどんな行動したかは、また別のお話。

<END>
 

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