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□2020年料理人誕生日
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1→空飛ぶ魚は夢を見る

料理人は、甲板で空を仰ぐ。雲ひとつない青空を。太陽の光が煌々としている、空を。のんびりとあおぐ。

「何してんだ?サンジ」

すると釣りに夢中になっていた船長と狙撃手がそちらを一瞥した。相変わらずの坊主らしい。釣糸がピクリとも動いていない。いや、料理人はそれどころではないらしいが。

「空に、魚が見える」

「おいおい、ここは空島じゃねぇんだぞふぎ」

「じゃあご自慢のゴーグルでみてもらいましょうかウソップ君」

「やべでー!!みる!みるから!」

「ほんとだ!魚だ!!」

「え」

船長の大歓声。いたずらっぽく料理人に鼻をつままれていた狙撃手はゴーグルをかちゃりとかけて空を見つめた。途端にあがっと顎が外れるくらい驚いた。

「サカナァァァァァ!?」

「だからさっきからそういってんだろ!」

「うるへーー!だれがしんじるかよそんな!」

「ここは偉大なる航路だぞ」

「いやー、その七文字で片付けるのそろそろやめない?」

ツッコミがてら一通り騒いだあと、狙撃手は先ほど見えた魚をゴーグルで見返している。いくつもいる魚。赤いのに、青いのに、緑なのに、黄色いのに。種類は様々だ。

「にしてもロマンだなぁ。魚が空飛ぶなんて」

「赤は毒、青は旨い、黄色はぼちぼち、緑は激ウマ」

「つかまえるぞー!」

「おれのロマンを返せ!!」

だが、狙撃手が感傷に浸っている間に、彼らは捕まえ食する相談をし始めるものだからたまったものじゃない。彼らの脳内には食のことしかないのかと呆れてしまう。

「いや、でもこれ、ウソップだけのロマンじゃねぇぞ」

「へ?」

だが、何いってんだと言わんばかりの船長の一言に瞬きする。

「おれ達のロマンだ。そうだろ?」

煙草をかちりとつけて付け足すのは、どこかいつもより顔が明るい料理人。そうだ。彼の憧れは、夢の海。すべての海の魚が一所に集まる、最高の海だ。

「だったら、こいつらも案外オールブルーを探してるのかもな!!」

狙撃手は、嬉しそうに話にのっかった。こういう夢とロマン溢れる話は大好きだから。

「ほら、魚たちにとっても夢の海だろ!」

彼の反応に、2人はにっと笑う。再度、空をみる。キラキラと目映いばかりの、夢を湛えた鱗が見える。

「かもしれねぇな。じゃあ少し泳がせてから」

「捕まえて」

「食うぞー!!」

最後にはロマンの欠片もなく騒ぐ彼らだったが、三人の顔は魚の鱗の如くいっそう楽しそうに、輝いていたのだという。

<end>


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