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□うそぷとこっくとけんしの話
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この島は、元はといえば人気が盛んな島だった。海水の成分がたっぷり含まれた島なので悪魔の実の海賊は襲っては来られない。だから街はいっそう盛り上がり、にぎやかに人々が楽しんでいた。
あの日が、くるまでは。あの化け物が、現れるまでは。

「どうしよう……」

焦った声を出した船医。すでに仲間が3人も上陸した島。二人は食材や材料探し、一人は迷子。悪魔の実の能力者は地面に降りると弱るため、おとなしくお留守番。能力者が弱る島は前にもあったので、この島もそうなのかと気にも止めなかった。だから、見落としていた。たまたま船の上に舞い上がった新聞を。

「今すぐ呼び戻さなきゃ」

「大変なことになりかねないわね」

「よーしおれ呼び戻してくる!」

「バカまでお前が行ったら弱るだろ」

「そうですよ、電伝虫もありますし、我慢我慢」

音楽家は電伝虫を手早く鳴らす。料理人が今日は子電伝虫を持っているはずだ。ぷるぷるぷるぷる、がちゃ。繋がれば、一安心。

「もし、もーし」

――おう、ブルック。こちらサンジ。

静かな声が返ってきた。いや、あからさまに静かすぎる声だ。いつもならなんだレディじゃないのかとかなにやらいうはずなのに。

――わりぃが今話してる暇なくてな。

「まさか」

――あぁ。だいぶ島の奥で、マリモをたまたま見つけたところ。

唸り声が聞こえる。小さな悲鳴も。そして、刀を抜く音も。

――えれぇ化け物を、見つけ……

そこで、ぶつん、と電伝虫が切れた。ツーツー、ツーツー。音楽家は息を呑んだ。船長は赤く瞳を染めた顔を上げた。

「迎えに行くぞ」

「え、ルフィ。ゾロとサンジとウソップがいるんだぞ!!」

「みんなつえーのわかってるけどおれも戦う」

「それくらいやばいってことね……」

船長の言葉に航海士は息を呑んだ。ならば、船長の命に答えるため、船大工が動き出す。

「わかった、将軍を出してやる。地面に降りなきゃ大丈夫なんだろ」 

「とんでく!」

「やめとけ、ギアで行く気だろうが、10分で切れたら落ちちまうだろォ。おとなしく待っとけ、すぐ準備できるからよぉ」

「でもっ」

「持ちこたえてくださいますよ、あのお三方なら」

「待ちましょう、ルフィ」

船大工の言葉にもどかしそうに船長は外を見た。今にも飛んでいきそう。そんな彼を考古学者と音楽家が宥める。

「そういえば、どんな化け物なのかは描いてなかったの、チョッパー」

「書いてた!だからおれもいかなきゃ」

「どういうこと?」

船医はいつの間にか青いリュックを準備していた。その中に何やらたくさんの薬や薬草を入れて。紫黄色緑種類が違うものを。

「その化け物は」

待ちきれなくなった航海士が船医から散った新聞を受け取ると、顔色が強張った。

「人々に死には至らないにせよ痺れと発熱をもたらす毒をもつ」

見覚えのある3文字に息を呑んだ。

「サソリの、化け物」

島のかなり奥地で、ひどい地鳴りがした気がした。


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