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□2021料理人誕生日
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『あ』から始まる物語

「あー、暇だ」

「ひまーー」

「暇だなぁぁ」

お昼過ぎ。降りしきる雨の日。続くは3日の長雨。風もほとんどなく、サニー号の航海停滞気味だ。読書に飽きて、釣りにも飽きて、暇だ暇だと喚くのはいつもの狙撃手、船長、船医の3人である。

「なぁーナミ、なんかねーかなー」

「暇だーー」

「私は海図で忙しいんだけどね」

ともすれば、彼らはエンターテイメントを求めて仲間たちの元へと練り歩く。とりあえず訪れるのは図書館。航海士がカリカリと海図を忙しそうに作成している。

「ゾロに遊んでもらったら?」

「ゾロはずうっと寝てるぞ!」

「フランキーは?」

「船直してるぞ!忙しそうだったんだー」

「へぇ、ブルックは」

「歌作りだ!なんか気合入ってたぞ!!」

「ロビンは……そこで真剣ね」

「なー、本おもしれぇのかなー」

航海士はそれぞれ仲間のしていることを雑談がてら聞きながら、引き続き器用に海図を描いている。どうやら仲間たちは忙しくて、3人とは遊べないようだ。

「悪いけど私ももう少ししたら集中モードよ」

「えぇ……じゃああとはサンジだけだなー」

「キッチンにいなかったぞー」

「どこにいるんだ?」

「……あ」

ぶすっと拗ねたような3人。航海士はなにかひらめいたようにニッコリと笑っていった。

「あ、実は私、サンジくんがどこで何してるか知ってるわよ」

「えっ、何してるんだ?」

「教えてくれ!」

「そうね、それを手伝ってもいいかも」

すると、航海士はメモ帳をちぎり、さらさらと何かを描いた。んん?と3人の視線がそちらに集まる。面白そうに、集まる。

「ここにサンジくんがいるわ。探してみなさいよ」

「あっ」

「地図だ!!」

そう、航海士が描いたのはサニー号の簡単な図。するするさらさらと描かれたものなのに、ちゃんと場所はわかる。ほえーと仲間たちは感心した声を出した。

「どう?暇つぶしになる?」

「ありがとうナミ!」

「よーし、サンジ探しの旅に出発だ!」

「しゅっぱーつ!!」

地図を眺めながら、彼らは声を上げて料理人を探しに向かっていった。

「ふふっ」

航海士は楽しそうに笑いながら、目の前であらかたざっくりと描いた海図を眺める。先程のサニーのを描いたときのように、まだちゃんと場所等は描いていない。

「ここから、集中集中」

違う地図なのに同じ地図を持っている気分になってクスクスと笑いながら、彼女は詳細に地図を描き記して行くのだった。

「あーっ!サンジ見つけた!」

「何してんだ!!」

「……うどん用の小麦粉運んでんだよ、手伝ったらうどん作りもさせてやるぞ?」

「やるーーっ!!」

かたや、宝の在り処、もとい暇つぶしの在り処を見つけた、3人の声を聞きながら。
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