Short3
□New person and old companion.
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――償いをしろ。
あぁ、悪夢は去ったはずなのに。
――お前は悪魔だ。
解決したのに、なんでまた?
――償いに海に沈め。
いや、待て。この声。
どっかで、聞き覚えが――
瞼をゆっくりと開ければ、まだ辺りは真っ暗だった。額を手で拭えば、汗でびっしょり。酷ェ冷や汗だ、まったく。
おれは、一昨日の夜まで悪ィ夢を見続けてて、呪いのせいで海ん中に沈められた。でも、あいつらが身体を張って助けてくれて、いい夢を見て。疲れてるだろうから、とレディ達が気を使ってくれて、少し幸せな気分だったんだ。
でも、また、夢ん中でおれを罵倒してた奴と同じ声がした。おれに呪いをかけた金色のブレスレットは、剣士に斬られて無くなったはずなのに。くそっ、訳がわからねぇ。
「…水」
喉が渇いたわけじゃねぇけど、なにかしなきゃ落ち着かねぇ。だから、涼しい甲板に出て、キッチンに行こうとした。
「サンジさん?」
眠たげな声で呼び止められて振り向けば、ブルックがおれをからっぽの目で見つめていた。なんでもねぇよ、と返す前に骨の肩に手をぽんと置かれた。
「また、夢見が悪かったんですね。顔色よくないです」
「…まぁな」
甲板に歩み寄って、ため息混じりに段差に腰掛ければ、奴はゆっくりとついて来た。寝ろよ、って言っても首を横に振った。まったく。
「寝ろって。ホネによくねぇぞ」
「…新参では、信用出来ませんか?」
「…お前な。この船じゃ、新参も古参もクソもねぇよ。夜だからネガティブになってんのか――」
ぴた、と思わず固まっちまった。古参、なるほどそうか、あの声、あいつの――
「サンジさん?」
はっとブルックの声で我に返った。よっぽど呆けた顔をしてたんだろう。やけに、心配そうだ。
「…ちょっとな、思い出し事だ」
「よろしければ、教えてください」
「なんで」
「皆さんのこと、もっと知りたいですから」
「…お前、さっきからなんか不安なのか?」
聞き返してやれば、ブルックは困ったような表情をちらつかせた。ホネとホネの指を合わせながら、おれの方を見る。
「ルフィさんが」
「ん」
「お前は仲間なんだから、役に立ちたいとかいっつも固くなんなくていいぞ、と」
「ほぉ」
ルフィめ。いつの間にそんな船長らしいことをブルックに言ったんだ。
「私、入れてもらった以上皆さんのお役に立ちたくて」
「そりゃ全員考えることだし、根底にはそれがあんだろ。最大級に困った時以外、大抵前に出さねぇんだ」
「何故?」
「なんでって、堅苦しくて恥ずかしいじゃねぇか。」
まぁ、それだけじゃねぇけど、と付け足してもおれの言葉にぽかんとし続けているブルック。ホネでもそういう様子がわかって、少し笑えた。
「んじゃ、眠くなるまでホットミルクでも飲みながら話すか」
「え?」
「おれ達のこと、知りてぇんだろ?やなら別に構わねぇよ。こっちもちと、照れるし」
「い、いいえ、知りたいですっ!!」
「…そーかい」
じゃあ、キッチンでとブルックを招いて、ホットミルクを煎れてテーブルに二つ置いてから、おれは話を始めようとしたが。
「この話は、いつの話で?」
ブルックに遮られたから、一つ息をついてホットミルクを一口。身体が温まるのを感じながら、言葉を返す。
「…おれが、この一味に入り立ての頃の話」
「なるほど」
お続けください、とブルックがやっとこさ促したので、おれは話を始めた。
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