Short3

□New person and old companion.
1ページ/10ページ



――償いをしろ。


あぁ、悪夢は去ったはずなのに。


――お前は悪魔だ。


解決したのに、なんでまた?


――償いに海に沈め。


いや、待て。この声。
どっかで、聞き覚えが――





瞼をゆっくりと開ければ、まだ辺りは真っ暗だった。額を手で拭えば、汗でびっしょり。酷ェ冷や汗だ、まったく。


おれは、一昨日の夜まで悪ィ夢を見続けてて、呪いのせいで海ん中に沈められた。でも、あいつらが身体を張って助けてくれて、いい夢を見て。疲れてるだろうから、とレディ達が気を使ってくれて、少し幸せな気分だったんだ。


でも、また、夢ん中でおれを罵倒してた奴と同じ声がした。おれに呪いをかけた金色のブレスレットは、剣士に斬られて無くなったはずなのに。くそっ、訳がわからねぇ。


「…水」


喉が渇いたわけじゃねぇけど、なにかしなきゃ落ち着かねぇ。だから、涼しい甲板に出て、キッチンに行こうとした。


「サンジさん?」


眠たげな声で呼び止められて振り向けば、ブルックがおれをからっぽの目で見つめていた。なんでもねぇよ、と返す前に骨の肩に手をぽんと置かれた。


「また、夢見が悪かったんですね。顔色よくないです」


「…まぁな」


甲板に歩み寄って、ため息混じりに段差に腰掛ければ、奴はゆっくりとついて来た。寝ろよ、って言っても首を横に振った。まったく。


「寝ろって。ホネによくねぇぞ」


「…新参では、信用出来ませんか?」


「…お前な。この船じゃ、新参も古参もクソもねぇよ。夜だからネガティブになってんのか――」


ぴた、と思わず固まっちまった。古参、なるほどそうか、あの声、あいつの――


「サンジさん?」


はっとブルックの声で我に返った。よっぽど呆けた顔をしてたんだろう。やけに、心配そうだ。


「…ちょっとな、思い出し事だ」


「よろしければ、教えてください」


「なんで」


「皆さんのこと、もっと知りたいですから」


「…お前、さっきからなんか不安なのか?」


聞き返してやれば、ブルックは困ったような表情をちらつかせた。ホネとホネの指を合わせながら、おれの方を見る。


「ルフィさんが」


「ん」


「お前は仲間なんだから、役に立ちたいとかいっつも固くなんなくていいぞ、と」


「ほぉ」


ルフィめ。いつの間にそんな船長らしいことをブルックに言ったんだ。


「私、入れてもらった以上皆さんのお役に立ちたくて」


「そりゃ全員考えることだし、根底にはそれがあんだろ。最大級に困った時以外、大抵前に出さねぇんだ」


「何故?」


「なんでって、堅苦しくて恥ずかしいじゃねぇか。」


まぁ、それだけじゃねぇけど、と付け足してもおれの言葉にぽかんとし続けているブルック。ホネでもそういう様子がわかって、少し笑えた。


「んじゃ、眠くなるまでホットミルクでも飲みながら話すか」


「え?」


「おれ達のこと、知りてぇんだろ?やなら別に構わねぇよ。こっちもちと、照れるし」


「い、いいえ、知りたいですっ!!」


「…そーかい」


じゃあ、キッチンでとブルックを招いて、ホットミルクを煎れてテーブルに二つ置いてから、おれは話を始めようとしたが。


「この話は、いつの話で?」


ブルックに遮られたから、一つ息をついてホットミルクを一口。身体が温まるのを感じながら、言葉を返す。


「…おれが、この一味に入り立ての頃の話」


「なるほど」


お続けください、とブルックがやっとこさ促したので、おれは話を始めた。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ