Short3
□Choice of the cake.
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誕生日は、お前が食いたいケーキを作れ、ってルフィ達に言われた。だから今こうやって白い紙を広げ、鉛筆を摘んで考えてるわけだが、どうもまとまらねぇんだ。
おれが好きなケーキっていやぁ、そりゃそれぞれ紅茶に合うよう考えてるわけで。例えば、ダージリンミルクティーなら、フルーツをふんだんに盛り込んだタルトだし、アッサムストレートティーなら、クリームたっぷりなケーキだし。
誕生日に飲みてぇ紅茶なんて、今からわかるわけでもねぇしなァ…。
かと、言って、例えばおれの誕生日ケーキは無し、ってしよう。そしたら、どうなる?そりゃもう、クレームの嵐だ。
――ダメだぞ、サンジ!電気消して蝋燭ふーっは誕生日のでっけぇイベントだからやんなきゃダメだ。
…とかな。意味不明な理論で、片付けられるのがオチだ。ロビンちゃんの誕生日ですら、ジンジャーブレットのお菓子の家の上に蝋燭立てて吹いたしな。
「どうするかねぇ…」
でも、あれは例外。蝋燭立てるとなれば、普通はワンホール。だがそれだとケーキは一種類だ。その一種類が決まらねぇから、困って…。
「あ」
…なるほど、そういう発想もありか。
思い浮かんだ瞬間、おれのペンは順調に動きはじめた。
――――
「なんだこれ、すんげぇ!!サンジすんげぇ!」
「うまそぉぉぉぉ!!!」
「綺麗…!」
最高のサプライズを受けた後、おれはみんなの前にケーキを差し出した。それは、色んなケーキを少しずつ切って組み合わせて作ったスペシャルケーキ、なんと50センチの一ホール。
四分の一はもちろんナミさんのみかんも使ったフルーツゼリーを載せた、ゼリーケーキをグラデーションにして。四分の一チョコレートケーキを微妙に苦みを変えて。四分の一はとろけるようなチーズケーキを様々取り揃え、最後はショートケーキを。乗り切らなかったモンブランはプチサイズにして、中心にちょこんと。
蝋燭は、そりゃもう、歳の数だけさ。
「よぉし、じゃあ、サンジふーっしろ!!ふーっ!」
ルフィに促されながら見つめるのは、火をついた蝋燭。辺りはアクアリウムバーのライトだけ。息を吸い込むだけ吸い込んで。
……ふーっ。
「おぉぉぉ、全部消えたぁ!!」
「やったなぁ、サンジ!」
「よし、ケーキ食うぞ、ケーキ!どれもうまほー!」
「コックさんから選んだら?」
手を伸ばしかけたルフィ達の手が止まる。おれは思わずロビンちゃんの言葉に瞬きしちまったんだ。
「え、あ、おれは、どれでも」
「そーだ!!サンジから選べ!」
「お前いっつも、遠慮してるもんな!」
「黙って選べ」
全員の視線が、集中して。悩んだ挙げ句、
「…じゃあ、主役のこっちからも、頼みだ」
「なんだ?」
あいつらが目を真ん丸にしてこっちを見る。おれは、スペシャルケーキを指差して、
「どれも美味くて決められねぇんで、お前ら選んでくれ」
あいつらに笑ってやれば、瞬きを二回ほどして、あいつらも笑う。そりゃもう、当然だって顔で、嬉しそうに。
「そ、そ、そ、それもそうだな!」
「サ、サンジ!!ナミのみかんのやつ美味そうだ!」
「あー!!それ私が勧めようとしてたのにっ!!」
「それはナミが食うべきだろ!おれさまは一番上のモンブランがいいと思うぞ!」
「同感」
「お、おぉ?ゾロもか!」
「ロ、ロビン!こん中で一番甘いやつ何かなぁ?」
「チョコのこれじゃないかしら。じゃあ、私もそれで」
「わかっちゃねぇな、お前ら。定番はショートケーキに決まってんだろ、ショート!」
「ヨホホホ!チーズケーキもミルキーで美味しそうですよ!!」
「だから、どれも美味ェんだって!サンジが作ったんだからなっ!」
揉みくちゃになりながら、悩みながら、おれの為にケーキを選んでくれるのは、なんか少し、くすぐってぇが。
……しあわせだ、畜生。
<HAPPY BIRTHDAY SANJI!!>
―――――
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