Short3

□Thread's intention.
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目が覚めたら、真っ暗闇の中だった。
何したか、何されたかわからねぇ。直前の記憶がねぇんだ。


もしかしたら、今寝てて夢ん中なのかもしれねぇ。
もしかしたら、誰かに傷つけられて、死んで、地獄行きくらったのかもしれねぇ。


全然、まったく、記憶にねぇんだ。


試しに目を閉じては見たものの、闇から出られるわけもなく、わけもわからねぇまま、おれは闇の中を歩きはじめる。ただの、真っ暗な闇。辺りからうめき声が聞こえて来る。怖くはねぇが、気味悪いのなんのって。闇と一緒に、纏わり付いてくる感じだ。


耳を澄ませて声を聞けば、どうやらこう言ってるらしい。


『血を寄越せ、肉を寄越せ』


って。
奇妙な音を立てながら、近づいて来る。
退治しようかと臨戦体制を整えたら、目の前に降りてきた細くて白い糸。上を見たら光が続いてる。これを掴んで登れば、元に戻れるんだろうか。闇ん中から、出られるんだろうか。


「よっ」


力付くで手繰り寄せて掴んだら、頭の中に何かが流れ込んで来た。


――そうだ…どうせ死ぬなら、楽しい方がいい。


少し若返った、聞き覚えのある声。アフロにグラサン、ボロボロに傷ついた沢山の身体とボロボロの海賊船。
間違いねぇ…ブルックだ。


――唄い、ませんか?


何で、と思う間もなく、傷だらけの男達が演奏するビンクスの曲が頭を流れる。おれは、登る手をすっかり止めていた。そしたら、おれの背中に寒気が走る。下を見れば、黒くて、気味が悪い人間が、必死におれの足を掴もうとしていた。早く、登らねぇと。手を伸ばして、糸を掴む。また、続きが流れ出した。


ブルック以外全員、楽器を落として、床に倒れ伏している。


――なんです…!!伴奏だけ残して……。


やめろ、って声が、思わず出た。
どさっ、とブルックの声が止んで、若い生身のブルックが甲板に倒れて。
……死んだ。


「くそっ…」


気分が、悪くなった。仲間の苦しい過去を見せられて。おれは、何も出来ねぇまま、ただそれを見るだけ。今のあいつらがそれを乗り越えて楽しく過ごしてるって、わかってても。あいつらの苦しいとこなんざ、見たくねぇだろ。


考えてたら、おれの足を何かが掠った。そうだ、登らねぇと。…登らねぇと。
二度と、あいつらに会えねぇ、そんな気がした。


「早く…しねぇと」


おれは、また手を伸ばした。
糸を掴んだら、また流れ込んで来る映像。水色髪に、短パン。ゴーグル。
今度は、フランキーだ。


振り払おうと、糸を手繰っても、お構いなしに映像が流れ込んで来る。


――トムさん!!


倒れ込んだ男は、フランキーの師匠に違いねぇ。運ばれていく師匠を助けようと暴れるフランキー。その顔は辛そうで、必死で。敵わねぇとわかってても、立ち向かうんだ。


「………」


おれは、手を伸ばすことを忘れかけていた。ずる、と落ちかけた手、思い出してまた登るけど、全然、手が進まねぇ。


そして、フランキーは、走って来る海列車と対峙して、線路の上へ。


――止まれ海列車ァ!!


必死になって腕を広げたけど、海列車にフランキーの身体は脆く跳ね飛ばされた。



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