Short3

□Middle 19 cooks.
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『新スモール・ビスケット』


一枚かじれば丸一日12〜13歳まで記憶ごと若返るという不思議なビスケットです。ただし、13歳以下の人々がかじってもただのビスケットです。悪魔の実を食べた人々は9時以降にしか効果はありません。いつものスモールビスケットより気がつきにくい時間差採用!小さくなるまで6時間かかります!
一枚で約一日分!小さくてお腹にもお手頃!



Aさんは深夜0時の夜食に間違えてビスケットを一つ食べました。朝6時に身体が縮み、戻ったのは次の日の深夜0時です。
つまり、口に入れた瞬間から一日という意味ですよ!


―――


「何で新しいのを出した」


「さぁ…」


ニワトリが鳴き止んで朝日がとうに昇ったサニー号のテーブルに、リボンで結ばれたビスケットの袋が置いてあった。裏に貼り付けてあった説明書を見て剣士と狙撃手が呆れた顔をする。


「なぁに、もう10時?」


「サンジさんが起こしてくださらなかったみたいですね」


「おいおい、今日上陸すんだろー。こんな調子で大丈夫か」


「朝メシー」


航海士と音楽家と船大工と船長が次にキッチンに来、寝癖でくしゃくしゃの頭を掻き混ぜた。表情には寝過ぎと不満が現れている。


「あら、チョッパー。どうしたの?」


「出してた服が無くなったんだ」


次に船医はどこかしょんぼりとして現れた。昨日ベッドの側にだしていたピンク色のTシャツとズボンがなくなってしまったのだという。お気に入りなのに、と呟く船医を、考古学者が撫でて後で探しましょ、と慰めた。


「サンジィ、メシー!!」


空腹の船長が勢いよくキッチンを覗き込む。からっぽのキッチン。鍋からはスープの香りが漂い、皿の上にはサンドイッチとクロワッサンがラップをかけられて置いてある。だが、相変わらず料理人の姿はどこにもない。


「いねーなぁ」


「まだ寝てんのか?」


「朝ご飯があるからそれはないと思うわ」


考古学者がサンドイッチとクロワッサンを指差して首を振る。手を伸ばそうとする船長をぱちんと叩いて、船大工はアクアリウムバーに降りていき、リフトから叫んだ。


「アクアリウムバーにもいねぇぞー!!」


「勝手に出かけちゃったのかな?」


「まさか、おれ達が起きねぇからいやになって…」


「えぇぇ、そんなのやだぞ!」


「サンジはんなことしねぇ!!」


「ウソップも変にネガティブにならない!」


「わ、悪ィ」


狙撃手のネガティブを信じてしまった船医は未だに不安そうな顔をしていた。そこに音楽家が帰ってくる。


「ソルジャードッグとトイレを見てきましたが、居ませんでした…」


「どこいったんだ、サンジ…」


一味が心配そうに船内を探す中、考古学者はテーブルの上のビスケットの袋を摘んだ。中を読み、リボンを見る。


「コックさん、これ食べたんじゃない?」


「え?」


考古学者がリボンを指差しながら言う。


「このリボン。元々糊付けされてたみたいよ。今は括り直されてるけど」


「あ、ホントだ!」


じいっと視線がリボンに注がれる。リボンを試しに解いて見れば、確かに固まった糊の後が残っている。


「裏の説明書も小さいし、可能性あるわね」


「でも、何でこんなのがあるんだ?」


狙撃手の質問に固まったのは剣士除くほとんどの一味。ん?と首を傾げて狙撃手と剣士が顔を見合わせる。


「甘くて」


「うまそーだった!」


「配ってたから」


「つい」


「バイトの姉ちゃんが必死で」


「もらっちゃいました」


「お前らか!!」


剣士と狙撃手が同時にツッコんだ。申し訳ない、と小声で謝罪する彼等を流すように、考古学者がビスケットの袋を回転させながら観察し数える。


「12枚入りだから、1枚食べたみたいね」


「じゃあ一日、縮んだままってことか!?」


「早く見つけなきゃね」


「外は無人島で危ないしな」


一刻も早く探しに行こう。そう一味は動き出したが、考古学者は小さく言った。


「…やっと見つけたわ」


「え?」


「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!!」


聞き慣れない甲高い声が、食糧庫から響く。一味は顔を見合わせ、声の方に走る。


「あー…」


からっぽの小麦樽の中に震えながら隠れていたのは。


それに入れるくらいに小さくなり、船医のTシャツとズボンを着ていた料理人だった。



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