Short3
□It takes two to make a quarrel
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――…誰だか…知らねぇが。
サニー号の電伝虫。何も言わずに受話器をとったおれに、いつもとは違った弱った声で、あいつはこう言った。
――…迎えにきて…くれねぇか。
『It takes two to make a quarrel』
おれは、無言で。受話器をたたき付けるみてぇに切ってやった。はらわたが煮え繰り返ってたから、あいつと話なんかしたくねぇし。
あ?あいつ、っていうのは、うちのコックのことだ。今は名前も呼びたくねぇんだ。
だって、あいつとおれさまウソップは、今、大喧嘩してるんだから。
なんでって理由を聞かれたら、思い返すのも腹立たしいけど話してやろう。
おれは朝少し出掛けてすぐに帰ってきたんだ。ちょっと買い物することあってさ。んで、午前の船番してるチョッパーと交代して船番することになったんだ。
買い物ってのは、ゴーグルのクリーナー。とはいっても新しい方用じゃなくて、昔使ってた古いゴーグルの方用の。あのゴーグルはガキの頃から使ってて、想い出がいっぱいつまったもんだから、そう簡単には捨てられなくて。
だから、ちゃんと綺麗にして鞄にしまっとこうと思ってさ。昨日の晩、綺麗に掃除して、甲板に洗濯と一緒に干しといたんだ。
なのに、あいつ。
おれのゴーグルを、おれがいねぇ間に勝手に捨てちまったんだ。
おれはちゃんと出かける前に、何回も何回も大切だから、丁重に扱えって言ったのに。ガキの頃の想い出や前の戦闘の想い出がいっぱいに詰まってるから、絶対絶対大切にしてくれって、言ったのに。
おれが帰ってきた途端、
『悪ィ、間違って捨てちまった』
なんて、軽く言ってきて。しかもへらへら笑っててさ。おれは腹が立って腹が立って仕方なくて。
サン…いやいやあいつの頬っぺたを思いっ切りぶん殴ってやったんだ。
不意をつかれたのか、あいつは尻餅をついて、頬を擦りながらおれを睨んだ。
『何すんだ、てめぇ!』
『うるせぇ!おれは、言っただろ!あのゴーグルがどんだけ大切か!お前に言っただろ!それなのに、お前は…!』
おれもすぐにそう睨み返して怒鳴った。おれの剣幕にサンジは少しだけたじろいだけど。すぐに怒鳴り返してきた。
『だからなんだ!今は新しいのあんだろ!いつまでもぐちぐち男が未練たらしくなさけねぇ!とっとと捨てちまえばいーだろ!あんなゴミ!!』
『なにぃ!!』
この言葉がおれの核心をついた。サンジはおれの様子見てもっと怒鳴る。
『そうだ、ゴミだろ!いらねぇもんはいらねぇよ!邪魔んなるだけ、捨ててせいせいだ!』
おれは、あいつが。そんな嫌なこと平気で言ってくるのが、ショックで、腹が余計に立って。頭ん中ぐちゃぐちゃで訳がわからなくなって、怒鳴ったんだ。
『一番邪魔なのお前だろ!!』
『…な…!』
あいつの顔から血の気が引いた。あん時のおれ、今のおれもだけど、それをざまあみろ、なんて思って。もっと強く責めたんだ。
『そーだっ!これはウソなんかじゃねぇぞ!仲間の大切なもんもわからねぇ奴なんか消えちまえ!!』
『てめぇ…!』
『二度とおれの前に顔出すなっ!!』
『おい…』
そこにゾロが入ってきて。あいつはおれを一睨みして、キッチンを飛び出していっちまった。おれも、あいつを追わずに、怒ったまんまキッチンに座り込んだ、だけだった。
それで、15分くらいして。電伝虫が鳴って。さっきみてぇに、おれは切ってやったんだ。
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